第41話
もう何もかもがどうでも良くなってしまった。私には何もかもがなくなってしまった。私なんて人間……いや、
…いや、自ら手放したの方が正しい
私には勿体無い完璧な幸人という恋人がいたのだから。
涙なんてもう一切出なかった。私にはなく権利すらないから。代わりに出たのは乾ききった笑いとため息だけ。
どこからが間違っていたのだろうかと問えばきっと生まれたことさえ間違いなんだろうなって今ならそう思う。
私はそんな
先輩が出て行ったドアをじっと見つめる。
きっともう二度と会うことは無いんだろうな。私は捨てられたのだから。ゴミはゴミ箱へ。
当然の結果だった。
「もう、この関係を止めよう」
先輩は何気なく、まるで普通の会話のようにこう言った。
告白だと思って色々頭を回していた私は虚をつかれ、その時きっと呆けたような、何を言われたのか理解できていない馬鹿面を晒していたことだろう。
「ど、どうして…?せ、先輩は私のことす、好きなんじゃ無いんですか?」
「え?あー…うん。好きだよ」
「なら!!どうして」
私は切羽詰まりながらもここでなんとかして先輩を止めなければ何もなくなると理解した私は怒鳴り声で聞き返した。
「前に話してた別れた彼女とまた付き合えそうなんだ。だから、この関係を切りたくて」
「そ、そんなの…そんなの勝手すぎます!!」
そんなの、そんなの…じゃあ私はなんのために…。
私は一瞬にして沸点に到達し、先輩を罵倒する。
「この、屑!!私はなんのために…どうして!?」
「落ち着いて、幸菜ちゃん」
「落ち着けるわけない!!誰のせいだと思ってるの!?」
私はヒステリックに叫び続け、罵倒を浴びせ続けた。
幾らか私の溜飲も下がった頃、先輩はすっと立ち上がって部屋を出ようとした。
私は慌てて腕を掴んで引き留めようとするも、離されてしまう。
「せ、先輩…」
「今までありがとね、幸菜ちゃんも俺のことは忘れて彼氏と仲良くね」
「…」
「あ、それと」
と付け加えるように先輩が私に言い放つ。
「俺のこと散々罵倒してるけど、幸菜ちゃんも俺と同じだろ?」
「…え?」
「俺と同じでクズじゃん、お前。彼氏がいるのに股開いてるじゃん。幸菜ちゃんが俺のことを下に見てたのも知ってるからな。どこからどう見ても俺と同じクズ」
「…」
私は何も言い返せずただ呆然と立ち尽くした。
「まぁ、そんだけ。あのバイトも辞めるからもう会うことないと思うけれど、頑張ってね。それじゃあね」
そうして今に至る。
そして………私は冷静になった頭でこう考えた。
ねぇ先輩。
確かに私と先輩は同じクズ、です。どうしようもない生きているだけで人に迷惑をかけるような存在しちゃいけないような人です。
なら、先輩だけ人間ヅラするのって…変じゃないですか?
先輩が言ったんですからね?同じだって。
だから一緒にゴミ箱に行きましょうね?
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