第40話

『先輩、今週の休みに会えますか?』


 このメッセージを送ってから、もう一日経つのかな?


 私が先輩との体の関係を持ってから、かなりの時間がたった。最初は前のようにすぐに返信が来ていたのだけれど、だんだんと返信が遅くなっていき今では良くて数時間後、悪ければ二日、三日帰ってこない日もあった。


 会えば普通に前のように接してくれるし、シフトも被ればいつものように仲良く仕事をしているけれど………。


 一度胸に巣くった不安はなかなか拭うことはできず、増していくばかりだ。

 

 もしかしたら先輩は他の人とも関係を持っていて………なんて考えてしまったら、どうしようもない。


 私は別に先輩の彼女ではない………ただの体の関係で先輩の事を好きかと聞かれると答えあぐねてしまうくらい微妙な宙に浮いた関係。


 だけれど、先輩が私から無くなってしまえば私が幸人に対して最悪なことをしたことの意味が全てなくなってしまう。


 私の居場所がどこにもなくなってしまうから、私は縋るように先輩から返信がくるのを待っているだけ。


 …………本当に私って屑なんだなぁ。どうしてこうなっちゃったんだろう?元からこうだったのかな?多分きっと、そうなんだろうな。

 

 私は最初から幸人の隣に立てるような人間じゃなかったんだ。


 ギュッと身を抱きしめながら、目を瞑る。何も考えたくなかった。心の中がまたぐちゃぐちゃになっていくのを感じる。自分という存在が分からなくなっていく。


 そんな時、スマホの通知音が鳴った。


 私は目を覚まして急いで確認すると


『良いよ、会えるけれど..............』


 私は先輩からの返信にそっと胸を撫で下ろし、安堵する。どうやら今週は会ってくれるみたいだ。


『その時に話したいことがある』


 話したい事って何だろう?もしかして............


『分かりました、じゃあ今週の休み楽しみにしていますね』

『うん』


 もしかしたら先輩は私に告白しようとしてくれているのかもしれない。体だけの関係じゃなくて恋人にしてくれるのかもしれない。


 私は若干の嬉しさと共にそれと同じくらいの不安、そしてその話を断ってしまいたいという気持ちが湧き上がった。私の中にある幸人を好きだという感情、そしてもしかしたらまだ可能性があるのではないかという未練が先輩から告白されることを拒否しているんだと思う。


 だけれど............雪奈と幸人を見ていてあの二人はきっと死ぬまで離れないんだろうなと分かってしまう。


 特に雪奈は幸人の事を絶対に離さないだろう。ずっと側にいて幸人の事を愛し続けるだろうなという事が想像できる。


 ..............もし先輩に告白されたら。


 ................受けよう。


 私にはそれしかないのだから。

 





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