第16話 きっと
天音さんのお葬式は、それから数日後に執り行われた。葬送曲として選ばれたのは、cosmoの『ミルキーウェイ』だった。
そして、葬式が終わったあと、沙雪さんから白い封筒を手渡された。
「天音が部屋に置いていたものです。読んでやってください」
その封筒の表面には『星野先生へ』と細い字で書かれていた。
『この手紙は、家を出る前に書いています。勝手なことしてごめんなさい。先生は、ずっと私のために徹夜もして病気のこと調べてくれてたんですよね? 本当に嬉しかったです。これは私のわがままだけど、このまま死ぬのを待つのは嫌でした。結局死んじゃうんだけど、それでも私は星を見たかったんです。本当にごめんなさい。私は、先生に会えて本当に嬉しかったです。ありがとうございました。お元気で。三島天音』
「天音さん……っ」
僕は思わず手紙を握った。天音さんの細い文字は所々震えている。
怖かったんだ。きっと。何もかもが。投げやりになったんじゃないかと思ってたけど、そういうわけでもなかったみたいだ。けど……やっぱり……
「っ……」
強く握りすぎてシワが付いた便箋に水滴が垂れる。文字が滲んでいく。
僕はしばらくそのまま立ち尽くしていた。
――――――――――――――――――――――
「先生」
不意に声をかけられ振り返ると、黒髪ロングの女の子が立っていた。
「……月歌さん。驚いた、去年と印象違かったから一瞬わからなかったよ」
僕は笑って女の子――月歌さんに歩み寄った。
去年会ったときは髪も今より短くて、ポニーテールにしていた。けど、今は腰辺りまで髪が伸びていて、結んだりしていない。
「先生も、メガネ、コンタクトにしてるじゃないですか」
月歌さんは笑って言った。大学一年生になった月歌さんはすっかり大人っぽくなっていて、笑い方も上品になっていた。去年は受験でピリピリしていたから、余計そう感じる。
確かに、僕も最近、コンタクトを始めたばかりだ。
「大きい病院に転勤してね。手術もするようになったから、メガネだとちょっと邪魔で」
「確かに邪魔そう」
笑った月歌さんはおもむろに空を見上げた。
「……天音、いますかね?」
「いるよ。きっと」
僕は微笑んで空を見た。いくつもの流星が空を流れては消えていった。
星降る夜 瑠奈 @ruma0621
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
クリスマス/瑠奈
★10 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます