第28話 3都市会談の末

ハドリアが炎の都市の長ハルヒをつれて戻ってきた。


「やあ、アオイ!」

「ハルヒ!」


本当にハルヒを連れてきた。


「待っていたぞ、ハルヒ」

「ああ、キル。この間はありがとうな」


キルとハルヒは時々あっているようだ。

おれも簡単にふたりと会えるようになるのだ。


「アオイがようやく扉を設置したようだ」

「そうか、場所はどうした?」

「その話をしようとここにきたんだ」

「そうか」


キルとハルヒとアオイの初めての3都市会談が始まった。


「水上の都市としては他の都市の住人すべてを迎え入れることにしたんだ」

「では、だれでも行き来できるようにしたということか?」

「はい、そうです」

「そうか」

「キルはどうするつもりだ?」

「いままでは知る人ぞ知るという感じだったが……そういうわけにもいかんだろ」

「そうだな、おれもそう思うよ。だが、おれの都市はまだまだ遅れている」

「はい、それも考えました。それぞれのいいところを取り入れてはどうでしょう」

「いいところ?」


ハルヒは首をかしげている。


「はい、水上の都市はかなり進んでいます。すべてがコンピューターで管理されています」

「それが、すごいんだよな~」

「はい、でも人と人とのつながりがまったくない寂しい感じになっています」

「そうなのか」

「でも、炎の都市の人たちは種族が違うのにみんな仲良く助け合っています」

「ああ、そうだな。喧嘩もあるけどな……」

「はい、でもそれがいいんです」

「そうなのかもな」

「その間がわたしたちの都市、ドラゴンの都市だな」

「はい、そう思います」

「たしかに、それぞれ協力できたらすべての都市がいい方向に進む気がするな」

「はい、おれはそう思っています」

「……」

「……」


キルとハルヒは考えているようだ。


「わかった、ドラゴンの都市は賛成しよう」

「キル!」


おれは嬉しかった。


「でも、住人たちが行き来するとなると問題が起きるだろう」

「はい、水上の都市ではコンピューターで管理できるようにシステムを考えてもらっています」

「そうか……」

「もし、その管理がうまくいけばドラゴンの都市と炎の都市でも普及したいと思っています」

「そうか、それはありがたい。わたしが出向いてもいいんだが……大事になるからな」


なんか、想像できる気がする……。

キルは小柄ではあるが強そうだ。

ドラゴン族の長になるくらいだからな……。


「そうであれば、炎の都市も賛成しよう。だが、しばらくお試しという感じで扉を開ける期間を決めてほしい」

「それはいい考えですね」

「わたしも、賛成だ」

「では、お試し期間ということで1週間に一度解放するということでどうでしょうか?」

「「それで、決まりだ!」」


無事に3都市会談は終わった。

おれたちも月に1度会談を開くことになった。

この会談で問題を解決したり悩みを話しあって共有していきたいと思う。


――――


それから、何日かして神野さんから連絡があった。

どうやら、管理システムができたようだ。

他の都市とのもめごとなどを早急に解決するものである。

このシステムをドラゴンの都市と炎の都市にも設置した。

費用はおれがすべて負担した。

それも、いまのおれには可能なのだ。

だって……今回のおれの功績がかなり認められ、どうやらおれはお金を使いたい放題になったようだ。

これもすべてコンピューターが管理していることだ。


おれの噂が広まり、会う人会う人頭を下げてくるんだ。

おれは、威厳を保つために堂々としていなくてはいけない。

つい、ペコリと頭を下げちゃうときもあるんだよね。

まだまだ、慣れない。


――――


そして初めて扉を解放する日がやってきた。

扉の前におれはいた。

思っていたほど人はこなかった。

水上の都市だけだろうか。

やっぱり、怖いのだろうか。

ついに、扉をあけた。


「楽しんでおいで」

「はい」

「いってきます」


おれは、水上の都市の人を何人か送りだした。

そして、少しするとドラゴン族の人たちが水上の都市にやってきた。


「こんにちは、いらっしゃい」

「こ……こんにちは」


少し怖がっているようだ。

というより、あまりのビルの大きさに驚いているようだ。

でも、少しすると驚きよりも綺麗さに見とれる。


「わぁ~綺麗」

「ここの階段の上から見る景色はもっときれいだよ」

「そうなの? いってみよう」


そういって、螺旋階段をのぼり高いところから景色を見たドラゴン族の子の目は、キラキラと輝いていた。

おれは嬉しかった。

この素敵な水上の都市をもっと大勢のみんなに知ってもらいたいと思った。

炎の都市からも何人かきた。

まだ、数えるほどの人しか来ていないがいずれ大勢の人が行き来することになるだろうと思うと嬉しかった。


この扉を解放すると同時にナイルの花かごの販売をしようということになった。

螺旋階段の近くにお店を建て、そこに何個か花かごを置いて商売をした。

お店の名前は、『ナイルの花かご』そのままだ。

珍しい花かごにドラゴン族の人や炎の都市から来た人たちのほとんどの人が買っていった。

水上の都市に足を踏み入れた人は全員買っていったのではないかと思うくらい売れた。

次の解放日にはもう少し用意をしておくことになった。

それから、毎日が忙しくなった。

ナイルの花かごをいつもの100個用意したあと、次の解放日用の花かごを用意できるだけ用意した。

早めに用意しても不思議なことに枯れないからありがたい。

そして、次の開放日にはたくさんの人が行き来をした。

ようやく、すべての都市に問題なく行けるようになったのだ。

少し、もめごとがあったようだがロボットが出動してその場をおさめたようだ。

なんとかうまくいっている。


扉はまだ1週間に一度しか解放しないが、この先ずっと解放する日がくるかもしれない。


――――


おれとクレア、そしてナイルにナターシャと螺旋階段にきていた。

そこから水上の都市の景色をみていた。


「おれはみんなに出会えてよかったよ」

「「「わたしたちもですよ」」」

「そうか」

「これからも仲良くみんなで暮らしていきましょうね」

「ああ、そうだな。みんな、よろしくな」


「「「はい、ご主人さま」」」

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水上の未来都市~この素晴らしい都市を救ってやる 柚子桃しずく @momoyuzu-sizuku

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