学期末

「おわったー!」


 ハイタッチが交わされる教室。

 今日は期末テストの最終日だ。


「ふぅ」


 古典のテスト終了のチャイムが鳴った瞬間一気に疲れが押し寄せた。連日の徹夜で、あまり丈夫でない美玲の体は悲鳴をあげている。


 美玲の通う山桜桃ゆすらうめ高校は、県で三番目の進学校。北部の県内一位の高台こうだい高と南部の県内二位の安城あんじょう高の中間地点にある。北部の優等生は高台へ、南部は安城へ。美玲の県では常識だ。そんな常識の中、通える県内のトップの学校にギリギリ届かない子や、天才達に囲まれるのを恐れて、ワンランク落として入ってくる生徒たちが、山桜桃に集まるのだ。


 美玲も例に漏れず、入学してから周りに置いていかれるのを恐れて、安城を諦めた口だ。実際、高校生になってから部活漬けの毎日なので助かっている。



 面倒くさがりで少しズボラなところがある美玲は、一夜漬けでテストを受ける。前日の夜から朝にかけて本気で課題を片付けると、定期テストなんて、案外なんとかなるものだ。きっと今回も平均点くらいはあるだろう。


「日本史やばいんだけど、、」


 振り返ると進堂が真っ青な顔でうな垂れている。まあ、いつものことだ。相手をしない美玲を見かねて、三森がフォローを入れる。


「大丈夫だよ。今回のテスト平均高そうだ 

 もん」

「そしたら、赤点基準も高くなるじゃん!」

「赤点って、、」


 進堂の謎の逆ギレに、三森は呆れてこちらに助けを求める。


「日本史なんてただの暗記科目だよ」

「清水、、」

「どうせ私は要領いい二人とは違いますよー

 だ」


 分かりやすい煽り文句に、進堂はへそを曲げてしまった。少しやりすぎたみたいだ。


 なぜ進堂が定期テストで点が悪いのか分からない。提出物を終わらせるのは早いし、一週間前には三森と一緒に復習しているのに、いつも赤点の前後を彷徨っている。一方、一緒に勉強している三森は、なかなかの成績優秀者だ。真面目に勉強して、ちゃんと努力に見合った点数をとっている。


「二人とも真面目なのにね」

本心でそう思う。一夜漬けの美玲はテストが終わった瞬間、覚えたことは消えていく。そんな勉強法ダメだとわかっているのだが、、


「清水は前日まで課題残してるよね」

「当日の朝までだよ」

「嘘でしょ??」

この世の終わりのような声を出したのは三森だ。

「そうだった。去年は教室で終わらせてたよ

 ねぇ」

「あれ、そんなことあったっけ?」

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白く恋う 速水イチカ @1ka__hayami

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