帰り道
歩き始めて十分。もう駅に着いてしまう。美玲とはやては路線が逆方向のため改札を通ったら解散だ。
「まだもう少しだけ一緒にいたい」なんて言えない美玲は、駅が近づくといつも、わざとゆっくり歩いている。はやては気付いているかは分からないが、美玲のペースに合わせてくれる。相手の空気に溶け込むのが上手い。初めて二人並んで歩いた時から、そういう事ができる友達だった。
ただ、自分の間合いには入れてくれない。美玲自身あまり踏み込めない性格な事もあるが、はやてが何を考えてるか、いまいち読めない。
なんで付き合っているのか、そう聞かれるとやはり、、、、
「これみて」
と、急にはやてはスマホの画面下げて美玲に見えるよう、差し出した。二人は寄り添う形になる。
「いきなり?」そう言いつつ、美玲は画面を覗き込んだ。
画面にはハート、ダイヤ、蝶、雫の、四つのマークがあった。謎解きか何かかと、首を捻る。
「この中から一つ選んで」
「そんな、急に言われても、、」
「ほらほら、感でいいから」
美玲は少し悩んで、蝶を選んだ。
「蝶か、いいじゃん」
と、はやては満足気に頷いている。
「何なのこれ」
一人で満足させてたまるか。たまらず美玲は尋ねた。
「心理テスト。部活で流行ってんだ」
「へぇ、何がわかるの」
「えっと、、今思ってる事だ!
蝶を選んだ人はね、我慢してる事があるん
だって」
じゃあ、君のさっきの反応変だけどな。
「なんか言いたい事でもあるのかな?」
はやては美玲の呟きをスルーして話を自分のペースに戻した。背をかがめて顔を覗き込んでくる。
「そんな事ないし。はやては何選んだの」
「十字架」
「なんかはやてだなぁ」
ほんと変な奴。基本、二人の会話ではボケにのる。一人ふざけるともう止まらない。
「意味は束縛。かっこいいっしょ」
「天才的発想だわ」
「十字架って俺が作ったから」
「まじすか!」
二人で顔を見合わせて吹き出す。
「この話は厨二すぎる」
「それなぁ」
カンカンカンカン
踏切の音が電車の到着、そして二人の別れの時間を知らせる。美玲の乗る電車が来るようだ。
「じゃね」
「うん」
お互い控えめに手を振り合い、美玲は車両に乗り込んだ。
ドアが閉じてから、また手を振り、口の形で「バイバイ」とはやてが言っているのが見えた。かわいい奴だな。
「にしても束縛って、1番似合わないよ」
離れていく彼を見ながら頭の中で呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます