部活後
急いで荷物をまとめ、更衣室を出た美玲は時間を確認。予定より少し早く着替え終われた。
トイレの鏡の前で最終調整。髪をくくり直し、制服の着崩れをつくる。第一ボタンを開け、スカートを折る。唇にはお気に入りのコーラルピンクのリップ。わざわざ校則をはみ出すのはこちらの方が可愛いからだ。
「よしっ」
気合を入れ直すように、鏡の中の自分にしっかりと頷き、美玲は裏門へと向かう。
◇ ◇ ◇
時間ぴったりに到着。待ち合わせ相手の北はやては既に待っていた。
すらりとした体型。部内で2番目の高身長で、ポジションはキーパー。モテ部で有名なサッカー部の副主将を努めるはやては、男女共に人気らしい。
いや、女子から意識されるようになったのはきっと学年が上がってからだ。ずっとノーセットマッシュだった髪型を、はやては春休みの間にバッサリ切った。今の短めのスポーツ刈りはそれまでのやわらかなイメージを消し、運動部の男らしい雰囲気で、正直なかなかキマっている。「髪型を変えて友達が増えるなんて漫画の設定か」と、切ってすぐは、今までと違った周りの反応に少し照れていた。
「おつー」
美玲の声に気付きいたはやては振り返り、「おう」と、いつもの返し。目があった瞬間、今までの憂鬱な気分が溶けて流れ出したのを感じ、楽に息ができる。
「ごめん遅れた?」
「ぴったりだったけど」
「だよね、知ってる」
「普通は待った?って聞くんだよ」
「それはベタすぎでしょ」
「ベタに俺も今きたとこって言わせてよ」
「いつもは私の方が早いもんねー」
二人は、たわいもない話をしながら、一定の距離を保って歩き出す。密かに周りの人間が羨むカップルの美玲とはやてだが、付き合う前からずっと、この距離を変えたことがない。
恋人らしい行動はするが、恋人らしい想いがお互いあるのか。正直、今の美玲には友達と恋人の違いがわからない。
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