更衣室
今日は昼から降り出した雨のおかげでランメニューはなかったが、代わりの体幹トレーニングがなかなかきつかった。美玲の高校は男子はそこそこ勝ち上がるものの、人数の少ない女子は弱小校の部類だ。それなのに、ゆるい部活にならないのは人数の少なさゆえ、男女同じメニューで練習するからだ。試合も近いため、最近の練習はますます厳しくなっている。
更衣室は、汗と湿気でべったべたになった部員たちの制汗剤の匂いで充満している。匂いに敏感な美玲は、無香料のシートを使う。普段ならそのシートで体を拭くだけで帰るが、今日はそうはいかない。
「おつかれー」
ポーチを探っていると、後輩マネと一緒に片付けを終えた三森が着替えにやってきた。美玲の隣が三森の定位置なのだ。
「あれ、へんな顔」
ぎくっ、、
スプレーを体に振りまいていた美玲は思わず手を止める。
「普通のはずだけど、、」
「いやいや、いつもはもっとへらへらしてるじ
ゃん」
「いつも通りだよ」
三森の言うへらへらした顔を作って返してみた。しかし、そんな小細工が通用する相手ではない。三森はさくっと言い当てた。
「この後疲れてるのにめんどくさいなーとか
思ってるんでしょ」
「そんなこと、、」
「ほら、すぐに否定しなかった」
そうなのだ。この後の予定、あいつと会うことが憂鬱なのだ。
「実はね、、」
別に嫌いなわけではない。好きだから付き合ってるし、別れたいわけでもない。だが いざ会うとなるとその直前、憂鬱な気持ちに襲われる。それなのに、会ったら会ったで楽しい。あいつに対してカッコいいという気持ちもちゃんと持っている。普通に順調なはずだ。
「蛙化じゃない?」
美玲のぐだくだな思いを聞き終えた三森はそう結論した。
「もしくは停滞期。清水たち付き合ってどの
くらいだっけ」
「この前三ヶ月、、」
「なら今が最初の山場かな。このくらいで初
めの熱が冷めてきて別れる事多いんだよ」
「落ち着いてきちゃうって事?」
「そうそう」
別れる気配は無いと思うのだが、、
しかも冷めるほどの熱も最初からなかった。気持ち的にはずっと保温状態だ。
そのくらいサバサバした二人。
「まあ、頑張りなよ。好きなんでしょ?」
「そうだねー」
向こうはどうかわからないけどね。
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