第2話 混浴温泉でのイタズラは危険です

「へえ、そうなんだ。みんなはもうお酒が飲める年なんだね。良かったらさ、私達が働いてる店に飲みに来てよ。こうして裸の付き合いもしたことだし、少しくらいなら割引してあげるからさ」

「割引が無くても行きますよ。あんまりお酒って飲んだことないけどお姉さんたちと飲むの楽しそうだし」

「私達以外にも楽しい子はいっぱいいるから期待してていいわよ。それに、若い男の子がくること滅多にないからみんな喜んじゃうかも」

「みかんちゃんなんて常連のおじいさんに毎回言い寄られてるもんね」

「そう言ういちごちゃんだって似たようなモノじゃない」

「りんごちゃんは一人だけ若い常連ついてるけどさ、無口で無愛想なのに何でそんなに人気あるんだろうね。オッパイだって一番小さいのに」

「私は顔が良いって事しか取り柄が無いからね。話も面白くないし体も良くないし、見てるだけで良いって人もいるから」

「そう言うのってズルいよね。りんごちゃんみたいな顔に整形しちゃおうかな」

「やめなさいよ。あなたがりんごちゃんみたいな顔に整形出来るわけないでしょ。顔の大きさもパーツの位置も全部大違いじゃない」

「お姉さんは整形しなくてもいいと思いますよ。綺麗だと思うし」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。お店に来てくれたら本当にサービスしちゃうわ。指名料も君達なら無料にしてもらおうかな。ね、いいでしょマネージャー」

「そう言うのは私じゃなくて店長に聞きなさい。たぶん、ダメとは言わないけどその分お給料から引かれるわよ」

「お店から出してくれたって良いのにね。でも、綺麗って言ってくれてありがとうね」

「いえ、皆さん綺麗な人ばかりなんで俺達も緊張しちゃうなって話してたんです」

「まあ、緊張なんてしなくてもいいのに。それと、夢を壊すようで悪いんだけど、私達はみんな整形してるのよ。ごめんなさいね」

「え、そうなんですか?」

「そうなのよ。だから、私達はみんな整形してるのよ。あそこに一人でいる男の人は私達の店の店長なんだけど、彼は整形してないのよ。見ればわかると思うけどね」

「整形してるって、顔とか不自然な感じしないですけど」

「そう言ってくれるのも嬉しいわ。でも、顔はほとんどいじってないのよ。みんな二重にしたとか唇を少し厚くしたとかそんな感じなのよ」

「りんごちゃんはほとんどいじってないけど、ホクロを取ったんだもんね。アレはアレで田舎娘っぽくてよかったのにな」

「やめてよ。顔にホクロたくさんあるのコンプレックスだったんだからね」

「もっと胸とかコンプレックスはあるでしょ」

「別に胸は小さくても良いのよ。ね、君達は小さくても平気だよね?」

 りんごちゃんはそう言って男性に同意を求めているのだが、なかなかそれは難しそうだった。三人ともチラチラと見ているのはりんごちゃんではなく胸の大きいめろんなのである。その事に気付いているのは俺とめろんといちごだと思うのだが、りんごは自分の事を見ていると思い込んでいるんだろうな。この子は世界が自分を中心に回っていると信じてやまないのだ。

「小さい胸でアピールしても無駄よ。この子達が興味あるのはめろんの大きい胸なんだからね。そんなにコソコソ見てないでもっとじっくり見ていいのよ。でも、おさわりは禁止だからね」

「ちょっと勝手に決めないでよ。でも、見るくらいだったら別にいいけどね」

 めろんが胸を湯船に浮かべてアピールしているのだが、三人の男性は例外なくめろんの胸を凝視していた。りんごは明らかに不満そうな表情を浮かべていて、そのまま鬱憤を晴らすかのようにめろんの胸に手を伸ばして揉み始めたのだ。

「ちょっと、いきなり何するのよ。やめなさいって」

「こんなに大きいんだから少しくらい触ってもいいでしょ。この子達はめろんの事を気に入ってるみたいだし、少しくらいサービスしてあげても良いと思うし」

「こんなのサービスじゃないって、やめてって。バカ」

 りんごとめろんは一見仲が悪そうに見えるのだが、この五人の中では一番付き合いの古い二人なのだ。いがみ合うようなことがあったとしても五分後にはどちらかが折れて仲直りしているような関係なのだ。もちろん、他の三人の中が悪いということは無く、基本的に見せのキャストは皆仲が良いのだ。

 ただ、明らかに女性経験の少なそうな男性三人組はそんなやり取りを口をあけて見ていたのだが、それに気付いたみかんといちごとももはお互いの胸を揉み合いながら男性三人組を挑発していた。

 俺があの三人組の立場だったらどうするだろうかと考えてみたのだが、何も知らなければあの三人組のようにただ固まって見ていることしか出来なかったと思う。

「もう、あんまり変な事しちゃダメだって。店長に怒られちゃうでしょ」

「それもそうね。あなた達って意外と紳士なのね。襲われたらどうしようかて思っちゃった」

「そんな事思ってるならやめればいいのに。でも、三人とも動けなかったのは何か理由があったりして」

「あらあら、そんなことあるのかしら。って、三人とも大きくしちゃったんだ。可愛いわね」

 三人の男性をからかうことをやめない五人ではあったが、からかわれている男性三人もまんざらではないといった感じの表情を浮かべていた。

「ここでは何もしてあげられないけどさ、お店に来てくれたらオッパイの大きい子の下乳くらいなら触らせてあげるわよ」

「ちょっと、その言い方だと私に喧嘩売ってるように聞こえるんですけど」

「いちごの下乳を触ろうとしたら乳首に触れちゃうでしょ。さすがにそれはマズいからね」

「さすがにそれはバカにしすぎでしょ。って、どさくさにまぎれて何乳首触ってるのよ」

「やっぱりあんたは下乳無いじゃない。この子達もガッカリしてるわよ」

「私の売りは胸じゃないから良いのよ」

「って言っても、お酒を飲んでテンション下がる子のどこが良いのかわからないわ。世の中には変わった趣味の人が多いって事よね」

「めろんくらいの大きさの子もいるから気になったらお店に遊びに来てね。お店の名前とかはあそこにいる店長が名刺持ってると思うから来てくれるなら受け取っておいてね。あと、大きくなってるそれが大人しくなるといいね」

 こんなところでも営業をかけてくれるのは嬉しいが、きっとこの子達はお店には来ないんだろうな。温泉での営業がうまく行ったことは今までないのだけれど、こうして楽しそうにしているのを見ると全て失敗しているという事が信じられないのだ。ただ、原因はハッキリしている。

「そろそろのぼせてきそうだし先に出ちゃおうかな。私達はもう帰っちゃうけど、最後に見たかったらじっくり見てもいいからね」

 キャストの子たちは男性たちに向かって両手で乳房を持ち上げてアピールするようにしていたのだが、今まで遠慮してみていなかったこの子達もさすがにここまでされると見ないわけにはいかないと思ったのだろう。食い入るように胸を見ているのだが、残念なことにそれは全て作りものなのだよ。

「そんなにじっくり見てもらえるなんてお姉さん興奮しちゃうかも。写真とかはダメだけど、しっかり覚えて帰ってね」

 男性たちは小さく返事をしていたのだが、視線は全員胸に釘付けになっていた。若くなくてもあれだけアピールされてしまったら見てしまうよなと思いつつも、俺はもう少し温泉を楽しむことにした。キャストたちが髪を乾かす時間を考えればもう少しゆっくりすることも出来るだろう。

 それまで湯船に浸かって隠れていた下半身を見た男性たちは戸惑いの表情を見せていたのだが、それも仕方ないことだろう。

 自分たちにも付いている良く見慣れたものがキャストたちにもぶら下がっていたのだ。完全に思考を停止した状態の彼らが少しだけ不憫に思ってしまい、俺は心の中で深く懺悔していた。

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イタズラ温泉 釧路太郎 @Kushirotaro

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