第12話「終焉《しゅうえん》」ざまぁ




「酷いです!

 俺にだけ罪を着せるなんて!」


「そうです!

 私たちだけが悪いんですか!」


「お前たちは罰せられて当然のことをした!

 牢屋で頭を冷やせ!」


父に俺たちの言葉は届かなかった。


俺とアイリーはそれぞれ別々の牢屋に入れられた。


貴族用の牢ではない。一般人の入る地下の暗くて水はけの悪い汚い牢屋だ。


俺の話を一切聞かなかった父にも腹が立つが竜神ルーペアトもしゃくにさわる!


エルマから聖女の力を奪い俺たちがエルマを邪険に扱うように仕向けるなんてあんまりだ。


ルーペアトの詐欺師! ペテン師!


苛立ち紛れに壁を蹴ったら足の指の爪が剥がれた。靴を履いてないのを忘れてた。


踏んだり蹴ったりだ。


まぁ……俺たちがエルマを邪険に扱っていたのは彼女が聖女の力を失う前からだけど。


牢屋にいる間暇なので昔祖母から聞いた神話を思い出していた。


竜神ルーペアトは三百年前この地に降り立ち以来ずっとこの地を守ってきた。


ルーペアトは神族ではなく竜人というとても強い力を持つ物凄く長生きな種族だったと聞いている。


彼はこの国を覆う結界を張り、雨を降らせ、土地を豊かにし作物の成長を助けたと言い伝えられている。


ということは……竜神ルーペアトの年齢は三百歳を超えているのか?


対して彼のお気に入りのエルマは十八〜十九歳。


何百歳年下の人間に懸想けそうしてるんだよ、このロリコン!


そういえば祖母はこうも言っていたな。


「竜神ルーペアト様への感謝を忘れてはいけないよ」と。


年に一度の祭礼のとき僕は竜神に心から祈りを捧げたことがあっただろうか?


豊かな国の第一王子に生まれ幼いときに立太子し、王になるのが当たり前で神に感謝したことなど数えるほどしかなかった。


祖母が生きていた頃の祭礼はとても華やかだったのを覚えている。


祖母の死後祭礼の予算は年々削られ祭りの規模は縮小、それにともない竜神への供物の量も減った。


だから……天罰が下ったのだろうか?


人々が竜神への感謝を忘れたから……?


暗く狭い檻の中ではすることもなく。僕はネガティブなことばかりをぐるぐると考えていた。




☆☆☆☆☆





一年後。


地下牢でリウマチと痛風に苦しんでいた俺は帝国の兵に引きずり出された。


そしてこの国がモンスター退治に戦力を傾けている間に帝国に攻め入られ、あっという間に負けたことを教えられた。


王国の聖騎士と兵士と王国の雇った冒険者などが力を合わせ、モンスターの大半を倒したまでは良かったのだが。


皆が疲れ切ったところを帝国に攻め込まれたのだ。


戦士の大半がリウマチと痛風に苦しんでいた。あの状態で一年間もモンスターと戦えたものだと帝国の兵士が感心していた。


牢屋から連れ出された俺はまっすぐ処刑場に連れていかれた。


そこには父やアイリーや宰相や司教の姿があった。


彼らの衣服はボロボロで髪は乱れ靴も履いていなかった。


皆諦めた顔をしていたがアイリーだけは「嫌よ! 放して! 皇帝に会わせて! 美しい私を見たら妻にしたくなるはずだわ!」みっともなく騒いでいた。


彼女の艷やかで長く美しかった髪は短く切られ、頬はこけ、肌はボロボロ、目の下にくまができている。


かつて絶世の美少女ともてはやされたアイリーの面影はどこにもない。


そんな状態でよく自分は「美人だから皇帝に愛される」なんて思えるものだ。彼女の自己肯定感の高さには呆れるよ。


あんな姿を見たら百年の恋も冷める。


ギロチンにかけられたとき俺は初めて心の底から神に祈った。


竜神ルーペアト様、俺たちの犯した罪を謝ります。


心から反省しています。


どうかいま一度、俺たちに竜神の加護をお与えください。




――終わり――



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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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完結「婚約者に冤罪をかけて国外追放したら国が滅んだ〜神の手のひらの上で転がされていたことに気づかない間抜けな俺」 まほりろ @tukumosawa

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