第11話「せめて靴を履かせてくれ!」微ざまぁ




「ち、父上これは誰かのいたずらです!

 俺はこんな非道なことしていません!」


「そうですわ!

 誰かが私たちに濡れ衣を着せようとしているのです!」


「愚か者どもめ。

 竜神ルーペアトは証拠を提示したのだ。

 お前たちが寝室で前聖女を嵌めた発言をした場面と、

 高位貴族の治療を請け負う代わりに多額の見返りを受け取る密約を司教と交わした場面が、

 映像と音声付きで国中に流れのだ!」


父の言葉に俺の心臓は凍った。


隣にいるアイリーが息を呑む音が聞こえた。


「宰相、竜神ルーペアトの最後の言葉を馬鹿共に教えてやれ」


「はい、陛下。

『僕のお気に入りの子を虐めるような奴らには力を貸してあ〜〜げない。

 今日でこの国の神様を辞めるからあとは勝手にやって。

 あっかんべ〜〜!

 べろべろべ〜〜!』

 これが竜神ルーペアトの最後お言葉です」


竜神なんて呼ばれているからルーペアトは聖人君子のたぐいだと思っていた。


「あっかんべ〜〜!」なんて俺でも言わないぞ。子供かよ!


「すでに各地の結界が消滅しモンスターによる被害が報告されている。

 神はこの国を見捨てたのだ。

 お前たちのせいでな!」


父が氷のように冷たい目で俺を睨んだ。


「お……俺たちだけのせいですか!?

 使用人だってエルマに酷いことをしていました。

 大臣だって彼女を蔑ろにしていたし、貴族だってエルマを軽んじていた。

 父上だって俺が彼女を邪険に扱い奴に仕事を押し付けていたことを知っていたじゃないですか!

 それに一年前のパーティでエルマを断罪し国外追放することを許可したのは父上です! 

 なのに俺たちだけを責めるのですか!」


「煩い、黙れ!

 お前がエルマの婚約者の務めを果たし彼女を大切に扱っていたらこうはならなかったのだ!

 お前がエルマを軽んじるから貴族や使用人もあの子を軽んじてもいい存在だと認識し、彼女を虐めていたんだろうが!」


「俺が間違っていることをしていたなら父上が注意してくれればよかったんです!」


「煩い、とにかく全部お前たちが全部悪い!

 婚約者がいるのに浮気をした男と婚約者がいると知りながら近づいた女!

 ギャリックは公金を横領しその罪をエルマに着せ、アイリーはエルマに虐められていたと嘘をついた!

 お前たちの罪は重い!

 余はお前たちを罰し神の怒りを鎮めねばならん!

 衛兵、この二人を捕えよ!

 そして牢屋に連れて行くのだ!」


父の命令を受けた衛兵が俺とアイリーを拘束した。


俺たちはガウンしか着ていないのに……こんな格好のまま牢屋に入れるというのか?!


せめて着替えさせて靴を履かせてくれ!





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