第27話【視点】私は聖女よ!

 私は聖女として祈ってきたおかげで雨を降らせ、農作物だって育てた。

 なのに、どうして私は捕らえられて牢獄のような家に閉じ込められたのかが理解できない。


『本物の聖女ならばこのような場所自力で脱出できる。自力で脱出すれば無罪と認めよう』

 などと判決を下されてしまった。


 今、私は檻で囲まれた家に監禁されている。

 でも、毎日必要最低限未満の食事は支給される。


「こんなちょっとしか食べ物を与えないなんて、私を殺すつもりなのっ!?」

「聖女であれば自力で食べ物くらいそこの庭で作ることも可能だ! 聖女として証明してみせよ!」


 ふ……ふん!!

 だったら良いわよ!

 聖女としてしっかり証明させてやるんだから!

 そして、アイリス義姉様に一泡ふかせて土下座してもらうんだから!!


「庭に美味しい野菜と果物を植え、すぐに実らせなさい!!」


 心をこめて聖女らしく祈った。

 雨を降らせたり、街の作物を育ててきたのは私なのだ。

 いまこそそれを証明させる良い機会である。


「さあ、とっとと実ってまずは私の空腹を満たせなさいよ!!」


 だが、いくら待っても庭に作物は育たない。


「どうして!? いつもはすぐに雨が降ったりしているのに」


「ふ……噂以上だ」

「なによ!?」


 外にいる警備兵に嘲笑われてしまった。

 聖女としてのプライドに傷がつく。


「ここまでしても今だに聖女だと言い張っていられるとはな。ある意味天才だと思ったまでだ。この警備担当で腹が痛くなりそうなくらい笑ってしまうぞ」


「ひど!! 待ってなさいよ! 今すぐにでも野菜だって果物だって実らせてあげますわ!! あなたも土下座してもらいますからね!!」

「承知しましたよ。ま、できればの話ですけどね」


 まるで信用されていない。

 だが、一日たっても作物は育たなかった。


「昨日は聖女としての調子が悪かったのかしら……」


 私なら大丈夫。

 いつかきっと庭に作物を実らせることもできるのだから。


 だって、私は聖女なんだもの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

義妹が『私は聖女よ!』と誤った主張をしたことで婚約破棄まで宣言され居場所を失った私ですが、どうやら私が聖女のようです よどら文鳥 @yodora-bunchooo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ