第26話 幸せになれそうな日々

 義妹フリンデルが捕われてから更に二週間後、判決が下された。

 同時に義父様とゴルギーネ一家の判決も同時に行われた。


「兄上を殺そうとした罪は償いきれるものではないからな。処刑は免れぬよ」

「よく私は無罪になりましたよね……」


「血の繋がらない家族ということもあるので、たとえ同居していたとしても免除となる可能性は高かった。それに、調べたところ、アイリスは今まであの者たちから酷い仕打ちを受けていたのだろう? たとえ私の婚約相手でなかったとして赤の他人だとしても、同じ判決として無罪になっていたであろう」


 それを聞いてホッとした。

 義父様が捕まってから、少なからず私にも責任があるものだと思っていたから。

 これでようやく肩の荷が完全に降りた。


「フリンデルに関してだが……」

「やはり処刑ですか?」

「いや、むしろ生かす罪を選択させた」

「え!?」


 ジュエル殿下の言っている意味がよくわからなかった。

 王族を殺そうとした罪が家族単位で背負うものだと先ほどは言っていたような気もしたが、フリンデルは特別扱いとはどういうことなのだろう。


「彼女は思い込みにより犯行に及んだ。しかも裁判の最中もなお、自分は聖女だと主張していたようだ。ならば処刑にせず、聖女ではないと自ら納得するまで地獄のような日常を送ってもらう判決となった」


「と、いいますと?」

「アイリスの聖なる力を参考にしてな、聖女ならば生活に苦しむことなく過ごせるような環境と家を提供した。フリンデルにはそこで暮らしてもらう」


 詳しく聞くところによると、その家の周りには仕切りがあって外に脱出することはほぼ不可能のある意味監獄のような場所らしい。

 最低限の飲食は提供されるらしいが、聖女ならばその環境から脱出することも簡単だしそのまま生活するにも苦労することはないようなところなんだとか。


 フリンデルが聖女じゃないと自覚するまでそこで住んでもらうらしい。

 きっと、そこで一生を終えてしまいそうな気もするが。


「それよりも、明日ついに私たちの結婚式となる。そこでアイリスは聖女だということを民衆に証明してもらうことになるが」

「事前に雨を降らせ、式の開始に晴れるように祈ればいいのですよね」

「あぁ、すまないが頼む」

「問題はありません」


 最初はジュエル殿下との縁談も婚約も架空のものばかり思っていた。

 だが本当のことだとわかってから、私の性格までもが大きく変わった。

 クリヴァイム家にいたころは、臆病で恐がりで怒られるのを恐れて生きてきた。

 今は臆病で恐がりな性格はほとんど消え、堂々としていられるようになった。


 だが、例外もある。


「アイリスよ!!」

「ひゃああああっ!!」


 とんでもないタイミングで後ろから陛下に声をかけられた。

 こういう突然的な出来事には驚いてしまうことはある。

 ビビリ症というやつだ。

 こればかりはどうしようもできない。


「父上! 困ります。アイリスに声をかけるときは正面からでお願いしますよ」

「すまぬ。ところで、明日の式に関してだが……」


 結婚式の話はああでもないこうでもないと、打ち合わせが夜まで続いた。

 イベントの打ち合わせだけでこれだけ楽しめて幸せな気分になれるなんて……。

 ジュエル殿下に偶然拾われたおかげで私の人生は大きく変わり、これからは幸せな毎日をおくれるだろう。

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