「ちゃんとしたやつ」読みたくない?

この物語を読んで、最近使ってなかった脳の一部が動き出した。
フィクションの果実「イプロス」と、私たちが暮らす現実世界を実に上手く結びつけながら、物語は動いていく。

健康ブームに沸く消費者、流行の波間でもまれる生産地、それをとりまく報道と巨大な企業の思惑。
「ある」と思いながら、つい関心が遠ざかる世界の格差を再認識させられる。

そんなメッセージ性の強い作品でありながら、主たる情報は、ごく普通の男性の人生を通して伝えられる。
ささやかでドラマティックな「彼」の物語もまた、非常に味わい深いのだ。

たった一万文字で「すごくちゃんとしたお話を読んだ」という満足感までもらえるこの作品。おすすめです。