第7話

 マリは泣きながら公園に着いた。

「マリちゃん! どうしたのだ?」

間髪を入れずマリは問う。

「ずんだくんが言ってる事は正しいよね……?」

ずんだ餅が一瞬だけ硬直する。

「もちろんなのだ! なにかあったのだ?」

マリは、これまでを話し始める。

「それでね、私、話し相手がいなかったの。ずっと。みんな、私の事を避けるの。酷いよ」

マリの話をずんだ餅が遮る。

「大丈夫なのだ。僕がいるのだ。いいのだ?キミの言うことを聞いてくれない人なんて、キミの人生に必要ないのだ。僕だけを信用していれば幸せなのだ。僕だけを信用するのだ。分かったのだ?」

マリは泣きながら頷く。

「それでいいのだ。キミには僕と幸せでいる権利があるのだ」

「今日は、何の話をしてくれるの?」

ずんだ餅は半ば威圧的に話始める。

「よくぞ聞いてくれたのだ! 今日は食べてはいけない食べ物についての話なのだ! マリちゃんは普段何を食べてるのだ?」

「なんか、ナッツとか、ピザとかが混ざったやつ。お母さんが食べろって言うから……ここ三日くらい食べてないけど……」

「そんなものを食べたら毒なのだ! いいのだ? キミは水素水とずんだ餅以外食べちゃダメなのだ。水素水とずんだ餅以外の食べ物は毒があって、特にキミみたいな弱い子だと、食べてるとその内死んじゃうのだ。……もちろん僕の事は食べたらダメなのだ」

マリは笑みをこぼす。

「もちろんだよ。だって私の唯一の友達だもん」

「そうなのだ。それにね、もうお家に帰る必要も無いのだ。僕と……唯一の友達といれば、マリちゃんは幸せでいられるのだ。もう、苦しむ必要は無いのだ。ここで暮らすべきなのだ」

「そうなんだ、うん、それがいいよね。ずんだくん」

 

 それから三日近く、マリは家に帰らなかった。幸い、落ち葉が溜まる季節で寝所には困らなかった。そして何より、話し相手に困らなかったのが、マリにとっての何よりの救いだった。


 三日経った朝。マリが口から漏らすのは悲しげな独り言で無かった。それよりも寧ろ、喜びにすら感じる語りかけだった。

「ねぇおはよう、ずんだくん」

「起きたのだ?」

「うん。でも、まだ眠いからもう少しだけ眠るね」

「ゆっくり眠るといいのだ。ここでゆっくりしていって欲しいのだ」

「うん。おやすみ」

「おやすみなさいなのだ」



ずんだ餅が小声で呟く。

「人が水無しでいられる日数、マリちゃんに教えてたのだ? まぁ別にいいのだ。今更なのだ」

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喋るずんだ餅なのだ!  績カイリ @sekikairi

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