第17話 最終話
やがて裏展望台に向かう。こちらは他の展望台と比べて殆ど人が居なかった。相変わらず霧に覆われていたが十分後あっという間に霧が消えて陽が差して来た。
「わぁ凄い、晴れた摩周湖、本当に綺麗ね」
「良かったね、霧の摩周湖も良いけどやはり晴れた摩周湖は最高だね」
確かに摩周湖は見る角度に違って景色が変わる。いやあの時の景色とは全く別だ。あの時の摩周湖は哀愁が漂っていた。今は摩周湖の美しさは幻想的と言うべきか、この霧がそして夕陽が私達を包み込んでくれる。
陽子は余りに嬉しくて眺めていたが周りに誰も居ないと。思わず陽子は一成に抱きついた。
「一成さん私、いま最高に幸せよ」
一成は少し驚いたが強く抱きしめた。陽子にとって最高に幸せな時間となった。そして一成はポケットから何やら取り出し、改めて陽子の顏を見る。
陽子はキョトンとしていると一成は真面目な顔をして。
「陽子さん僕と結婚してくれませんか」
そう言って箱を開けると夕陽にキラリと光る指輪を取り出した。驚きの余り陽子は声も出ない。しかし陽子の心も、この摩周湖に着いた時、心は決まっていた」
「一成さんありがとう、こんな私で良かったら宜しくお願います」
更に演出が用意されていた。一成はホケットからスマホを取り出しと何やら曲が聞こえてくる。霧の摩周湖の曲がボリュームいっぱいに湖畔に流れた。なんと言う素晴らしい演出だろうか。陽子も年ごろの女性、ロマンチックな演出に酔った。摩周の湖に相応しい曲が静かに二人を包むように流れた。
♪霧にだかれて 静かに眠る
星も見えない 湖にひとり
ちぎれた愛の思い出さえも
映さぬ水に あふれる涙
霧にあなたの 名前を呼べば
こだませつない 摩周湖の夜
悲しい歌だけと恋人を思う哀愁が心を揺さぶる。陽子には生涯忘れられない日となった。摩周湖に魅せられて、そして恋は実った。
了
霧の摩周湖 布施明
https://www.youtube.com/watch?v=g82SjOPN0zA
摩周湖に魅せられて 西山鷹志 @xacu1822
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