第16話  再び摩周湖へ

 陽子と坂本は北海道に向かった。あの一年前とは違い今回は本当の恋人と一緒だ。坂本は約束通り北海道の魅力を教えてくれるそうだ。

その前にやはり摩周湖の謎を解きたい。なぜ摩周湖は霧が多いのか。そして霧の中に秘密はあるのか。あの時、確かに陽子は霧に導かれるように断崖に向かった。それも自分の意志と関係なく。そんな事を思いつつ二人は摩周湖に向かった。

「陽子、君が行った展望台は第一展望台かい」

「えっ他にも展望台があるの」

「裏摩周湖展望台(第二展望台)と第三展望台があるんだよ。場所により景色が違ってくるから見応えがあるよ」

「そうなんだ。折角来たから全部周りましょうよ。一成さん、摩周湖よ。私は此処で吸い込まれるように導かれたような気がするの」

「君がそう思うなら試して御覧なさい。いざとなったら僕が支えてあげる」

「もう大丈夫、一成さんが付いているから」

「ではまず第三展望台から周ろうか次に第一展望台、最後に裏展望台ここは一旦摩周湖を離れて遠回りしなくてはならないけど、一番神秘的な場所だよ」

 既に二ヵ所の展望台を周ったが霧で覆われていた。陽子は展望台に立ったが何も起きなかった。本来は起きるはずがない。あの時は精神的におかしくなっていただけだ。

陽子は確信したようには霧に追われた摩周湖に立った。暫くして陽子はポチリと言った。

 「分かったような気がする、この霧は私に何かを与えてくれた。ひとつは勇気と知恵よ。その知恵で私は色んな事を企画し会社に貢献する事が出来た。そし時を経て摩周湖の霧は一成さんを引き合わせてくれた。霧に吸い込まれるように飛び込みそうになったのは過去を断ち切って生まれ変わらされる為……きっとそうよね一成さん」

 「君がそう思うならそうきっとそうだろう。君なりに納得出来たら、来た甲斐があっただろう」


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る