第2話 たぬき芋
むかしむかし、
ある村に兵之助という若者がいました。
兵之助がぶらぶら歩いていると、
隣の家のおじいさんのさつまいも畑にたぬきがいるのを見つけました。
「あれは最近じいさんの畑を荒らしているというたぬきじゃないか?
追い返してやるか。…いや、とっ捕まえてたぬき汁にしよう。」
兵之助はそんなことを考えて
息を潜めてたぬきににじり寄りました。
たぬきは彼に気づくことなく、熱心に何かを食べるような仕草を繰り返しています。
「今だ!」
庄之助が飛びかかろうとした時でした。
たぬきは突然もがき苦しみ
「ぎゃあ!芋の毒にやられたあ!」と
叫んで倒れてしまいました。
兵之助は驚いてたぬきをじろじろみますが、ぴくりとも動きません。
そこに子だぬきがやって来て、
母たぬきの隣で何かを食べた仕草をするとぱたんと倒れてしまいました。
兵之助は青ざめて慌てて村長(むらおさ)の所へ駆け込んでこのことを話しました。
兵之助と村長が村の人々を引き連れて芋畑に行くと、狸の親子が倒れていたばかりか、他の狸も20匹ほどばったばった倒れていたのです。
「これはほんとに芋に毒があるのかもしれない。さあみんな、手分けして芋を掘り起こすんだ!」
村長の掛け声で村人たちはえっさえっさと芋を抜きました。
全ての芋を抜いて山積みにした、
その時です。
さっきまで倒れていたたぬき達が一斉に起き上がって、山になったさつまいもに飛びかかり、前脚いっぱいに芋を抱えました。
そうして彼らは
「これは大漁、お芋だほいっ。」
「これは大漁、お芋だほいっ。」と楽しげに歌いながら去っていきました。
たぬき達の死んだふりに、
村人達はまんまとしてやられたのでした。
さて、この話を聞いたある国の殿様が、
「たぬきが盗みたくなるほど旨いさつまいもとはどんなものだろう。」と興味を持たれ、村のさつまいもを食べたところ、大変美味だったそうです。
殿様に愛されたさつまいもは
村の名産品となり、いつしか
たぬき芋という愛称で呼ばれるように
なったとさ。
めでたしめでたし。
朋の創作むかし話 遊安 @katoria
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