殺意と敬意

 さすがの一言に尽きる傑作。

 かの『バガボンド(井上雄彦、講談社、敬称略)』で『対等な相手のおらぬ世の中はつまらぬぞ』という台詞が出てくる。

 本作は、鬼の大将が好敵手の孫を一歩離れた視点から眺める形で筋が進む。

 大将は、かつての好敵手とは本気で殺し合いをしたのだろう。でなければ彼にとって遊びにならない。しかし、孫はなんとも頼りない。そんな大将が好敵手の孫をさりげなく手助け『してしまう』のが実にいい。時代が下り、人間は怪異に繋がる力を失っていく。それを大将が歯がゆく思っている節があるのも本当にいい。

 必読本作。