鬼と陰陽師による世代を超えた友情物語

読み始めた頃には鬼と陰陽師による壮絶な戦いを綴ったものなのかと考えておりましたが、その実は守るべき都に鬼の大将が潜り込んでいるという奇想天外なお話でした。

ライバルであり友である陰陽師が亡くなり、鬼は彼の孫に面影を見つけます。素直になれないところはライバルであるからでしょう。しかし、鬼は要所要所で友の部分を覗かせます。それこそが本作の肝であり、人と鬼という敵対関係に人間らしさが加えられております。

プライドが高い鬼の大将。概ね陰陽師を見下しておりますが、一方で自分の孫のように友の孫を見ています。その関係性の面白さ。真面目な鬼退治でありながら、どこかコメディを読んでいる雰囲気すら感じました。

ボリュームもちょうどいい感じで、就寝前の読書に最適です。
時を隔てた鬼と人の友情に触れてみませんか?

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