じわりと迫る怖さと寂しさ

祖父の描いたという肖像画は、美しい女性のものであった。その女性は誰なのか。
短い中に詰め込まれた息をつかせぬ展開と、読んでいる最中よりも読了後にもたらされるぞくぞくと迫るような恐怖心、それからままならなさと寂寞。
肖像画と、青空と、足首。
もしも死者に言葉が届けられれば、対話することができれば、こんな風にはならなかったのだろうか。
けれど生きていく人間は死者を思い出に留めてそこに置き、歩いていくしかない。後を追ってしまわない限りは。
彼女の未練は何であったか。ぜひご一読ください。

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