第195話 銀世界でコーヒーを その四

「次はグラタン、なんだけど……」


 うーん、どうしようかね? 調理には焚き火も利用するつもりだったんだけど、これだと微妙か?

 いや、焚き火にはなっている。なってはいるのだけど……炎がまあまあ不安定なんだよな。暖をとるだけなら問題なさそうだが、調理となると心許ない感じ。

 やっぱり生木だと限界があるんかねぇ? マッチで火種さえ用意すれば、木屑と細かい木片でなんとかなると思ったんだけど。

 一応、諸々の工夫で形にはなっているが、形になっているだけ。調理に使うには、火力も安定性も足りない。途中でなんか火消えそう。


「仕方ない。炭も追加しとくか」


 念のため買っておいて良かった。これを何本か放り込んでおけば、ある程度はマシになるだろ。……あと、最後の仕上げに利用もできそう。


「んじゃ、気を取り直して。まず、じゃがいもをスライス。厚さはお好み。俺はちょっと厚めが好きかな? ちなみに、じゃがいももダンジョン産ね。あと玉ねぎも。……まあ、上層か中層のドロップだから、ただただ美味い野菜でしかないんだけど」


:一瞬で終わってて草

:へー

:相変わらずの包丁捌き

:ヒュってなってバラってなるのマジ凄い

:草

:ダンジョンの野菜はドロップが面倒だからな……

:恒例のスーパーカット

:草

:切る作業が一瞬で終わるの、シンプルにズルい

:たまに説明が雑になるよね、山主って

:どれぐらい美味い野菜なのか気になるんですが

:改めてみると、包丁使う工程が一瞬ってかなりの時短だよな

:手放しで美味いって言える野菜ってだけで十分ではある


 説明云々と言われてもなー。上層と中層のドロップ食材は、一部を除いて地上にある食材の最高級品or上位互換ぐらいの特徴しかないし……。

 まあ、美味い野菜ってことだけ分かればそれで良いじゃん? そっちの方が味の想像もしやすいでしょ?


「それはともかく。次は玉ねぎをカット。こっちはシンプルにくし切りね。これで野菜は終わり。今度はベーコン。こっちは市販品。ただちょっとお高めね」


 パッケージからベーコンを取り出し、適当に刻んでいく。ある程度の肉肉しさは欲しいし、焼いたらちょっと縮むことを考えると、厚めが無難かな?

 

「そしたらスキレットを出して、油を引きます。なお、この油は揚げニンニクのところから拝借。せっかくのガーリックオイルだからね。有効活用しましょう」


 スプーンで二、三掬いかな? それで油を回しながら、焚き火台にセット。この焚き火台は網が付属しているタイプなので、それを利用する。

 適当に薪をならしてしまえば、問題なく網も置ける。……やっぱり炭加えておいて正解だったな。薪を崩すとなると、火もすぐに消えてたかも。


「で、火にかけたら野菜類から投入していきます。さっき残しておいたニンニクの断片も忘れずに。……ガーリックオイル使うんだったら、必要なかった気もするけど」


:草

:草

:草

:アドリブでやってるのがよく分かる

:草

:いやまあ、ニンニクは入ってると嬉しいし……

:草

:草

:草

:草

:入れちゃ駄目ってわけでもないし、へーきへーき

:これは草

:草


 ま、そういうこともあるか。気にせず炒めていこう。……ところで、ニンニクの方はどうなってる? 焦げてない? 弱火でじっくりやってるから大丈夫だとは思うんだけど。


「……大丈夫そうだな。で、ある程度火が入ったら、ベーコンを投入。塩コショウで味を整えつつ、良い感じになるまで炒めていきます」


 全体が薄らキツネ色になるぐらいかな? それぐらいになったら、スキレットの中身をメスティンに移す。この時、外気温で冷めないように焚き火のすぐ側に置くことを忘れない。


「次の工程。今度はホワイトソースです。まずはスキレットに大量のバター。そして溶けてきたら薄力粉。で、じっくりかき混ぜていきます」


 なお、この時は火加減に注意。弱火が望ましいのだが、焚き火ではそれが難しい。なのでスキレットを持ち上げ、距離感を上手くとって調整していく。

 なお、揚げているニンニクは、このタイミングで一度油から引き上げておく。ちょっと手が離せなくなるし、まだ若干時間も掛かるからね。弱火だろうが入れっぱだと焦げかねないので、ここは慎重にいこう。

 氷点下なのが不安だが、焚き火の近くに置いておけば大丈夫なはず。多少冷めても二度揚げすれば問題ないし、ここは凍りさえしなければ良いの精神で進めていこう。


「……五分ぐらいやったかな? すると、こんな風に艶が出てくるらしいので、ここに牛乳を加えます。で、よーくかき混ぜたらもう一度火にかけ、コトコトととろみが付くまで煮込む。その間に塩、コショウ、コンソメを加えて味を整える」


:おー……

:美味そう

:これは美味そう

:めっちゃ料理

:ホワイトソースってこんな手間掛かってんのな……

:やっぱり山主って料理上手いよな

:こんなん寒い中で食ったら最高やろ

:あー、いけませんいけません! これはいけません!

:もうこれシチューとして食べれない?

:わーお

:あっつあつで最高

:これ絶対に美味いやん

:グラタンかシチュー食べたくなってきた

:ヤバいですねこれは


 うん。予想以上に上手くできたな。火加減が心配だったけど、焦げた感じもしない。ホワイトソースは成功と言って良いだろう。


「このホワイトソースを、さっきメスティンに移した具材の上にかけます。その後、ソースが均一になるよう、メスティンを軽く振って表面を整えたら、上にたっぷりのチーズ」


 パラパラとかければ、もう完成したようなもの。最後にメスティンの蓋を閉め──焚き火の中に直接シュート!!


「炭も蓋の上に乗っければ、擬似的なオーブンって寸法よ。これでチーズにもしっかり焼き目を付けられるね。……まあ、焦げないよう注意する必要はあるけど」


 わりと思い付きだけど、多分いけるでしょう。外国の人の動画で、こんな感じの調理よく見るし。あの自然の中でやってるやつ。アレと同じノリよ。

 さて、これで後は仕上げのみ。ニンニクの二度揚げをしつつ、お湯を沸かしてコーヒーの準備。あー、バゲットも焼かなきゃか。ま、網の上に置いときゃ終わるだろ。










ーーー

あとがき


 前回ちょっとツッコミがありましたが、自分が調べた感じだと生木でも工夫次第ではイケそうなんですよね。

 火種すらないとまず無理でしょうが、マッチ+木屑……おが屑?があれば、あとは知識と工夫次第かなと判断しました。細かい木材を適宜加えて、風とかで燃焼を促せばイける……かな的な?

 自力で検証するのは難しいので、本、動画、ネット知識を基にした推測ではありますが。

 まあ、それはそれとして多少の修正はしました。似たようなツッコミがあったってことは、描写が足りないってことですし。




で、告知です。



皆さん、ついに明日です。明日、本作のコミカライズ、第一巻が発売となります。準備はいいですね? ちゃんと通販のカートに入れたり、買い行く予定を立ててますね?


まだの人は是非とも準備をお願いします! 巻末に特典SSとかもついてるから!! 本っ当に買ってくださいお願いします!! この最新話まで追ってくれてる人には、きっと満足できるクオリティになっているはずなんで!!


ということで、2月10日、【推しにささげるダンジョングルメ 第一巻】発売じゃぁぁぁ!!


購入報告、感想などお待ちしております! コメント欄や、Xで呟いていただくと大変励みになります!

『タイトル長ぇ!!』って人は、【推しダン】と略していただければなと。恐らく、これが略称になると思うんで! ……根拠は裏作業のメールです。大体この略称でやり取りしてたので。多分コレ、の、はず……?


てことで、よろしくお願いします!! 買ってね!!!!



それはそうと、前のカドコミやニコニコのアレはゴメンなさいね? いや、私も更新内容知らなかったんですよね。

私自身、アプリの次回更新のお知らせを見て、あとがきに書いてる身だから……。所詮は原作者など伝書バトなのさ。冗談だけど。

ま、笑い話ということで。どうかお願いいたします。














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推しにささげるダンジョングルメ〜最強探索者VTuberになる〜 モノクロウサギ @monokurousasan

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