『ZOOM』に関する覚書

尾八原ジュージ

覚書

 2022年11月9日に完結した『ZOOM』ですが、例によってプロットなどもなく、行き当たりばったりで書いていたので、途中で方針を変更したり色々やっていました。

 こちらはそういったことに関する覚書です。なお、大いにネタバレを含みますのでご注意ください。


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・日刊連載が日課になっており、前連載『まりちゃんは檻を作ってる』が完結した後何日かして寂しくなった。大したことは何も思いついていなかったが、第一回目を書けばなんとかなるだろうと思い、とりあえず冒頭を書いた。

・当初は一万~三万字ほどで完結させようと思っていた。

・冒頭は『まりちゃん〜』と同じく文中で戻るタイプのものにした。最初は室内で何かから隠れるシーンを書こうと思っていたが、本文中で交通事故に巻き込まれそうだったのでそこに持っていった。この変更に対応するためちょっと内容を変えた。

・連載にあたってタイトルが必要だったので急いでつけたが、連載開始時「ZOOM」に特別な意味はなかった。複数の意味がある英単語ならどこかでタイトル回収できるだろうと思い、なんとなくつけた。リモート用のツールの名前で回収するとは思っていなかった。

・『まりちゃんは檻を作ってる』を超える見切り発車で、ストックがあるときの方が珍しかった。翌朝公開する回を、就寝時間ぎりぎり前に書いたりしていた。

・例によって毎日更新していたが、一度止まったらエタる気がして怖かったため。

・冒頭を書いたとき、キャラクターなどはまだ何も決まっていなかった。前作に出てきた小早川まりあちゃんが新生活をがんばっているところを書きたいと思い、視点人物として近所に住んでいるお姉さん=見浦花織が誕生した。顔がこわい設定は後から生えた。

・最初、尚輝はイマジナリー弟の予定だった。上手く物語に入ってこなかったため、現実にいたけどすでに亡くなっているという設定に変わった。

・ちょこっと出てきた見浦の従姉をあまり拾えず残念。

・「気のせい」の章の途中で詰まり、Twitterで「再登場させるとしたら誰?」というアンケートを取った。実はこのとき一位だったのは「神谷実咲(『みんなこわい話しが大すき』に登場)」で、小野寺円佳のポジション(ただし死なない)に置かれるはずだった。というかその体で途中まで書いたが、どうしてもしっくりこなかったので完全な新キャラクター・小野寺円佳を出すことになった。この時まだ小野寺は死ぬ予定ではなかった。息子を亡くしている設定もなかった。

・小野寺の家でも「気のせい」に活躍してほしいと思い、急遽息子を亡くしたという設定を作った。視点は彼女ではなく第三者の方が書きやすいと思ったので、弟である小野寺透を登場させた。

・交通事故は時間を稼ぐために起こしたが、思いのほか伏線っぽくなったため、これで冒頭を回収しようと決めた。

・「気のせい」は呪詛返しによってかえってくる、ということは決めていたため、お守りを供給したくなり鬼頭雅美(『巣』に登場)が再登場した。『巣』のキャラクターの中では人気があったため、もう一度出せてよかったと思っている。全体的に本作は、前の三作を読んでくださった方に向けたネタを多めに投げていたと思う。

・本作は『かえる』の章で終わる予定だった。連載のレギュラーである志朗貞明も、今回は画面に出さずに済ませるつもりだった。ところが急に天邪鬼な気分になって小野寺円佳を死なせてしまい、以降しばらく「気のせい」を隠れ蓑にした彼女の暗躍? が続くことになった。ここで歯車が大きく狂った。

・片山家は元々ヘイトを集めていたので、小野寺円佳の死と同時に全滅が決まった。ただ「死んでほしくない人」がいないとホラー的に盛り上がりに欠けるかな、と思って片山絵里を登場させた。彼女は何も知らずに結婚したため、出産を前に配偶者や義両親を亡くしたことで相当人生設計が狂ったことと思う。大変だろうが出産・育児をなんとか乗り越えていってほしい。

・「片山家」では、視点人物を絵里にすると彼女の心情がかなり入ってきてしまうと思い、避けることにした。善意の介入者として芳賀佐奈恵を登場させたが、書くほどになぜかいい人っぽくなっていった。死体など発見してしまい気の毒。

・志朗が介入したことで説明パートが始まり、車の中で延々話すことになったため、何かアクシデント的なものが欲しいと思い、葉書に電話番号を書いておくことにした。後でめちゃくちゃ後悔した。どうしてこんなところに志朗の電話番号書いといたの? という問いに対する答えが本当に浮かばず、あの伏線を張る前の日に戻りたいと願ったりした。

・黒木省吾をもう少し登場させたかった。最後、志朗と一緒に小野寺円佳のマンションを訪ねることにしようかと思ったが、わざわざ休日出勤させるほどの口実がないのでやめた。

・小野寺円佳は営業部時代にお得意様を通して志朗と知り合っており、その辺りについて小野寺視点で一章書くつもりでいたが長くなるのでやめた。二人は春先に出会っているのだが、その当時志朗は『みんなこわい話が大すき』で負った左腕の骨折がまだあまり治っておらず、小野寺がそこに漬け込んでグイグイ親しくなった模様。ただ彼女の目的はあくまで志朗の協力を得て呪詛を行うことで、志朗もそれは理解しているため小野寺のことを警戒している。従って男女の関係にはなりにくい。なっていてもおかしくはないのだが、おそらくなっていない。

・「後のこと」を最後まで書いたあと、ここで完結にしてもいいけどもう一話ほしいなと思って「呼ばない」を入れた。「まりあちゃん強い」というご感想を複数いただき嬉しく思う。


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 ひとまず以上です(2022年11月10日現在)。なにか思い出したら適宜追加していきたいと思います。

 お付き合いいただき、まことにありがとうございました。

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