戦慄するほどに華麗で濃密な退廃美。渦巻く愛憎の果てにあるものとは
- ★★ Very Good!!
一話目冒頭から、退廃的で耽美なイメージの奔流に圧倒されます。
彫像と化した吸血鬼、吸血鬼を苛む男娼、吸血鬼を世話する火傷の少年……美しいものと醜いものが入り混じりつつ、その対比ゆえに退廃の美がより際立つような、濃厚で精緻な文章に酔わされます。
やがて垣間見えてくる登場人物たちの思惑は、不穏な予感を滲ませて、場の緊張感をじっとりと高めていきます。血の臭いまでも漂ってきそうな、どこまでも美しく濃密な重苦しさ……耽美的なものがお好きな方にはたまらないと思います。
惜しむらくは最終局面、双子の行動の意味が初見で掴めなかったことでしょうか……他の方へのコメント返信を拝見したところ、なんらかの前提があったようなのですが、自分には知識がなくわかりませんでした。
とはいえ終始すべてが美しく、憎悪すらも退廃美を華麗に彩る作品世界に、ただただ圧倒されました。稀有な短編だと思います。