第29話 私の人生

 私は今、とても充実した日々を送っている。


「今回のダンジョン攻略も上手くいったな。収穫も、かなりあるぞ」

「そうですね。ダンジョンのマップも、かなり更新することが出来ました」

「しかし、あのトラップによる足止めは危なかった。なんとか突破することが出来たけれど」

「マリアンヌが居てくれたおかげで、なんとか戦い続けることが出来たけれど。君が居なければ、突破することは無理だっただろうな」


 パーティーの皆と一緒にダンジョンの攻略に挑戦し続けている。まだまだ終わりが見えない、長い旅路の途中。それでも私達は順調に成長を続けながら、一歩ずつ前へ進んでいる。


 ダンジョンから無事に帰還することが出来れば、報酬を得ることが出来る。様々なアイテムや素材を持ち帰り、かなりの金銭を得ていた。だけど、それだけで満足することは出来ない。


 私達の目標は、ダンジョンの完全攻略。まだ誰も到達したことのない最下層を目指して、今もこうして歩みを進めている。


 かなり先は長そうだ。まだ全然、ダンジョンは奥まで続いている。もしかすると、このダンジョンには終わりなんて無いのかもしれない。そう思うぐらい、どこまでも続いていた。それでも、諦めない。挑戦し続ける。


 まずは、過去に情報が残っている人類到達地点まで行くこと。


 ルートを決めて、準備を整えて、実力を磨き、経験を積んで。万全の態勢を整える。途中で死んではいけない。絶対に生きて帰ることを最優先に、ダンジョン攻略の挑戦を繰り返している。




 その一方で、私は診療所での活動も大切にしていた。


「どうでしょうか、マリアンヌ様?」

「これは、とても上手に治療することが出来ているわ。腕を上げたようね、ハンナ」

「ッ! あ、ありがとうございますッ! これは、マリアンヌ様に教えていただいたおかげです!」

「いいえ。ハンナが頑張ったから、これだけの実力を身に着けることが出来たのよ。自信を持ちなさい」

「はい!」

「じゃあ、次の患者さんを呼ぶわね」


 診療所を訪れる冒険者、商人、街の住人を次々と治療していく。私だけじゃなく、他の魔法使いも一緒に治療を行う。


 魔法薬などの販売も開始して、少しでも多くの怪我人や病人を救えるように活動を続けていた。


 街の人達からも感謝の声を貰うことが増えてきたし、噂を聞きつけて診療所を訪れる人も増えてきている。このまま頑張れば、もっと多くの人が笑顔で過ごせるような場所に出来るはずだ。


 怪我や病気で苦しむ人を助けることが出来ていた。母のように。これは、私だけの頑張りじゃない。他の皆も一緒に頑張ってくれている。だから私は、頑張りすぎて倒れるような心配はないだろう。私の周りには、頼りになる人が多くいるから。


 そして、私も負けないように魔法の腕を磨き続ける。もっともっと効果を高めて、効率的に。素早く患者の苦しみを取り払えるように、魔法の腕を磨き続ける。これも終わりのない、果てしない道だ。それでも、頑張れる。そんな気持ちにさせてくれる診療所の仲間たち。



 私には、今の生活が性に合っていた。王国に居た頃より、今のように様々な活動を続けている方が楽しいと思える。


 あの時、婚約破棄を告げられて良かったと思う。ここに来るキッカケを作ってくれた彼には、心の底から感謝している。


 ローハタの平原に来ることが出来て、ロバンやダイロン、他にも色々な人達と出会うことが出来て、冒険者になって活動すること出来て、診療所の手伝いを始めて母と同じような活動をすることが出来たから。本当に良かった。


 あのまま暮らしていたら、こんなに充実した日々を得ることは出来なかっただろうから。


 そして、これからも充実した日々を生きていく。これが私の人生。

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妹よりも劣っていると指摘され、ついでに婚約破棄までされた私は修行の旅に出ます キョウキョウ @kyoukyou

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