第28話 私のせいじゃない ※ルイーゼ視点
レイモルド家は、公爵の地位を剥奪されることになった。理由は、マクシミリアン王子を1年間も昏睡状態のまま放置したから。そんなの、私のせいじゃないのに。
私だって、彼を目覚めさせようと必死で頑張ってきた。色々な方法を試して、それでも駄目だった。そして、突然戻ってきた姉が勝手に治してしまった。
なんて人なの!?
勝手に家から飛び出しておいて、こんな時になって戻ってくるなんてありえない。しかも、私の邪魔をするなんて。あのタイミングで現れて、私の成果を奪っていくだなんて許せない。絶対に、私の成功を妨害するために戻ってきたのね。
もう少しで、マクシミリアン王子は私の回復魔法の力で目覚めていたはずだった。あの大臣が手引して、あの女が良い所を掻っ攫っていった。絶対に許せない。
それなのに他の皆は、あの女のことを称賛していた。
さすが救済の聖女様だ、なんて褒め称えている。その評価も、絶対にズルして手に入れたに違いない。あの女が、なんで私よりも評価されているの!? 本当は、その評価は私のものだったはず。
そもそも、なんでマクシミリアン王子様は倒れたのか。1年間も目覚めなかったのか。それは、彼が無理をしたから。自分のせいなのよ。それを、全て私の責任にするなんてありえない。
もっと言うと、マクシミリアン王子様は以前から疲れ気味だった。それを世話する事が出来なくなって、姉が逃げ出したのよ。その後始末を私がやっていただけ。
本当は、あの女が背負うべき問題だったのに。
婚約破棄されたとはいえ、すぐに家から出ていったのは責任から逃げるため。彼が倒れてしまうことを、あの女は予測していたのだろう。なんて酷い人。それを、妹に押し付けて、今も逃げて居なくなった。別の国へ行ったらしいが、本当に自分勝手な人だ。
私は、真実を全て話した。皆に語って、理解してもらおうとした。しかし、駄目。誰も、私の話を聞いてくれない。
結局、王都から遠く離れた辺境の土地に連れて行かれ、常に兵士に監視されながら平民と同じような生活を強いられるようになった。こんな生活、耐えられない。
「もう嫌よ、こんなの!」
「……処刑されなかっただけ、生きていられるだけ良かったと思いなさい」
お父様に必死で訴えるが、どうにもしてくれない。早く王都に戻って、前と同じような楽しい生活を取り戻してほしいのに。お父様は、何もしようとしない。
今の状況を受け入れることしか考えていない。そんなの、酷すぎる。
「だって、お父様!」
「こうなったのも、全てお前の責任だろう! お前はもう、文句を言うな!!」
「ッ!?」
お父様が怒り出す。だけど、私の責任じゃない。全て、あの女が悪いのよ。
そして、こんなことになっているのに助けてくれない婚約者のマクシミリアン王子が悪い。今の状況を受け入れて、何もしようとしないお父様が悪い。
私以外の、他の皆が悪い。こんな苦しい生活、もう嫌なのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます