第15話 久々の再会と先人の過去

「どうしたんや、そんな浮かない顔して。プロ行ってからボコボコに打たれたか?」

不動は落ち着いた口調で答えた。「いや、それよりももっと酷いことがあったんや……」

「何があったん?」とはっちゃんが聞くと

「………DPかかったんだよ………」と呟いた。「は?」「ドクターストップかかったの、俺。」「………何したんや。」「俺の右肩が関節内遊離を起こしたんや。」「か、関節内遊離?なんやそれ。」「簡単にいうと俺の肩関節の中に骨片っていう骨の端みたいなものができて、それが関節の中を動き回ってるんやって。それが痛みを伴う炎症を起こすんやって。医者の話じゃ1ヶ月は安静しとけって言われた。」「で、なんでここにきたん?」

「………さっき腕を振ってみたら、そんなに肩が痛まなかったんよ。だから、運動してもいいかなと思って………」不動は落ち着いたトーンで話していた。そうしてはっちゃんの方を見ると、はっちゃんは怒っているように見えた。そして「なんで練習なんかしてんだよ!!」と開口一番こう言った。

続けて「お前さ、平河先輩のこと覚えてるか?」「ひらかわ?………………誰だっけ?」

「あれだよ!俺らの一つ上の先輩でお前がエースになる前の山手のエースだよ。当時、山手三羽烏(さんばがらす)の一人!」「あー!あの人か!」「そうそう、あの先輩高校卒業した後プロ行ったか?」「行ってねぇ。」「それはなんでか知ってるか?」「たしか、肘を痛めたんだっけか?」「そうだ、俺も後々分かったことだが……………あの先輩は、

『左肘側副靱帯部分断裂』という状態だったらしい。ようは肘の靱帯が部分的に断裂してたんだ。その時、病院に行ったら『手首にある靭帯を移植するしか、野球を続ける道はない』って医者から言われたみたいなんだ。で、当然先輩は受けようとしたわけだが、『この手術をすると1年はボールを投げることができない。』と、医者に言われたらしい。

先輩がそれを起こしたのが2年の冬、つまり、その手術を受けると3年夏の甲子園で投げることができない、ということになる。だから先輩は『甲子園を投げ終えたら受けます。』と答えた。その後の結末は………お前も知ってるよな?』」「ああ、地方大会の決勝で投げ終えた後に肘の痛みが出で病院行ったら完全に靱帯が断裂していた。もうこの時点で、先輩が甲子園に出れないことが確定したんだってな。」「あの後、先輩がどうなったか誰も知らない。あの人が病院での面会も嫌がったからだ。お前も、あんな風にはなりたくないだろ?だったらゆっくり休め。」「……そうだな。分かった。ゆっくり休むことにするよ。」



注 


三羽烏→集団の中で特に優れている3人のこと







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フェニックス・エース ピータ @pita06NIna

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