第14話 挫折と再会
コンコン、「失礼します。」不動は先生に一礼して診察室に入った。「そこの椅子にどうぞ座ってください。」「ありがとうございます。」不動は椅子へ腰掛けた。「まず、あなたの今の状態を話させてもらいますと……あなたの肘は、関節内遊離という状態に陥っています。別名関節ねずみともいいますね。」「関節内遊離……」聞き馴染みのない病名に不動は首を傾げた。「まぁ首を傾げるのも無理はありません。この写真を使って説明します。」と言って見せてくれたのは白黒の写真だった。「これは、さっき撮らせていただいたあなたの右肘のレントゲン写真です。この写真のこの辺りに小さな塊が見えるのが分かりますか?」「はい。」「これ、実はあなたの腕の骨から千切れた骨片と呼ばれるものなんです。
これが関節内を動き回り肘に負担のかかる投げ方、例えば変化球を多く投げるピッチャーなんかは関節遊離体を作りやすいと言われています。変化球は想像よりも肘の靭帯やら筋肉やらに負荷をかけますから………」「そうですか……」「まぁ、しばらくは運動は控えたほうがいいでしょうな。ざっと1ヶ月くらいは。」「………………」
不動は黙り込んでしまった。そんなに長い間待ってられっかよ………不動は気づいた時には、いつものトレーニング場にきていた。腕を動かすと、「なんだ、痛みの”い”の字もねぇじゃねぇか1ヶ月ドクターストップなんて、溜まったもんじゃねぇ。今のうちに体力をつけて来年から1軍で開幕ローテーションに入るんや………」
その気持ちが、不動の腕を動かし続けていた。
自主練を始めてしばらく経った頃、聞き馴染みのある声が聞こえた。
「どうしたんだ、そんな落ち込んだ顔して。」驚いて後ろを見るとそこには、八幡雅也(やはたまさや)がいた。彼は山手学院の正捕手として不動とバッテリーを組み、青森県勢初の、東北勢初の甲子園制覇を成し遂げた、不動の相棒とも言える選手だ。「はっちゃん、なんでここにいるんだ?」不動は驚いて質問をした。「いやな、やっぱりかつての相棒がどんな活躍をしてるかやっぱり気になるやん。ましてやかっちゃんのことなんか優勝してからほぼ会ってなかったから久しぶりに会いに行きたいなーと思って。で、今日がたまたまリーグ戦の試合がない日だったからちょいと様子でも見にこようかなって思ったわけよ。」淡々と答えるはっちゃんに不動は驚きを隠せなかった。
その後かっちゃんとはっちゃんのこの出会いがこのチームの運命を大きく変えることになる…………
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