これは婚活というるつぼの底、自分でしかない自分を見つける物語

 社会人になってそれなりの時間を経て、「結婚」を意識するようになったアラサーの“私”。あれこれと思い悩んでいる中、同僚から街コンに行ってみないかと誘われることに。そして気乗りがしないまま当日を迎え、ひとつの答を見出すのだった。

 結婚とはなんぞや? 気持ち的なものは置いておいても、したいからできるようなものじゃないのに、社会的にはしているほうが普通? という感じのものですよね。

 本作ではそんな結婚と向き合う女性が描かれますが……重たい。腰の重さもさることながら、心がまたどんより重たくて。なぜこうも重いのか? 考えて、悩んで、彼女は自身がひとつの概念に囚われていたことに気づくのです。

 主人公の心情描写が実にいいのですよ。漠然とした重さが解きほぐされて明確な形を得、示される答、これが主人公自身のみならず読者へも教えてくれるのです。綺麗でなくとも格好よくなくとも自分は自分という、当たり前の真実を。

 小さな自信と自負を思い出させてくれる、ささやかだけれど強い物語です。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)