パンと靴

@hiesho-samui

第1話

 朝起きてから何回、「会社を辞めたい」っと呟いてるのだろう。呼吸する度に呟いている気がする。

 転職はしたいけど、やりたいこともない。ぶっちゃけ働きたくない。

 大学を卒業してから入社し、数年が経つ。入社してから思い返せば、仕事しかしていないのではないかと思うぐらい何もない。入社する1ヶ月前まではやりたいことがいっぱいあった。もう、何がしたいのかも忘れかけてる。英会話も習いたい、ヨガも気になるし、将来のためにWeb関係のことも知りたいと考えていたはず。

 その中の何か1つでもそれ以外でも行動すればこんな生活に変化があるのは分かっている。

 でも、したところで続かないし、暇もない。入社1年目に契約をしたジムも3ヶ月で行かなくなりその後お金を払い続け、7ヶ月で退会したことがある。

 私は何がしたいのか、昼休み1人でパンを食べながら考える。

 何がしたいとか話し外れずかもしれないけど、私は1、2年前辺りから結婚適齢期と言われる歳になった。結婚適齢期と言うくらいだから結婚することが普通なのだろうけど、私は結婚すらしたいのかも分からない。でも、自分のこれからの人生を考える上で無視をする訳にもいかない話題だ。それは私以外のほとんどの人が考えることだと思う。

 私自身、子どもがほしいわけでもないし、結婚したい相手がいる訳でもない。長生きしたいわけではないし、死にたいわけでもない。何もない。

 叶わなくても夢を追いかけてる人の方が私よりましな人生を送ってるのではないかと駅前のストリートミュージシャンを見ながら思ったりもする。

 そんな私の変化のない日々の中で唯一、微々だが変わるのは貯金額だけだ。今のご時世でありがたいことにだらだらと貯めたお金はいつしか三桁に達した。周りは結婚し、もう子どもがいる。本来ならば、このお金の使い道は、結婚なり自分の子どもに使うのが当たり前なのだろう。でも、自分のこのお金の使い道は老後の資金になるのだろう。どうせ、年金ももらえないし、このまま貯めて老人ホームへ直行という予定しか想像できない。

 そんな人生設計をしている私に対して、周りは結婚をしろと勧めるし、結婚する未来が当たり前のように話をしてくる。この歳になって、本当に結婚についてとやかく言われるんだなぁって驚いたりもした。

 そう言った人生の分岐点に差し掛かる度に見えない何かに追いかけられている気がして、逃げれる道を探していたが、その見えない何かから逃げるより追い抜かれた方が楽だと気が付いた。毎日同じでいいと思いつつ、毎日が同じことの繰り返しに嫌気が差し、毎月の手取り金額を見てはため息をついている。

 こんなことを思うくらいならパーーっと会社を辞めて別のことをすれば良くも悪くも変化のある日を体験できるのに。それか、私にもラブラブな彼氏とかいれば変わるのかもしれない。

 会社に行き、会社から帰り、土日は平日できなかった家のことをする。時たまに友達と遊ぶ。でも、遊ぶ相手も段々と減っていき、1人で外出が増えてきた。

 思えば、学生の頃のほうがお金はなかったが予定があり充実してた気がする。学生時代の友人と遊ぶが、色んなことを想像してしまって連絡が取りにくい人も増えた。あとは連絡が来たかと思えば、結婚報告だったりする。

 


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