釣瓶落としの後始末

長月瓦礫

釣瓶落としの後始末


木に登ってはすとんと生首が何度も落ちる。

そこに誰かがいるわけでもない。そういうひとり遊びでもない。


ただひたすらに、生首が木登りに挑戦していた。

要領が悪いのか、上手に登れないらしい。


「……」


ついこの間、身元不明の男がここで首を吊った。

縄の結び方がよくなかったのか、頭と胴体が千切れてしまった。

男の引き取り手はとうとう見つからず、そのまま供養された。


よほど強い未練を残して死んだのか、男の生首が姿を現すという噂が流れ始めた。

夜な夜な木の下に現れては、生首が自分の胴体を探し回っている。


俺の目の前にいるのがそうなのだろう。

生首がきょろきょろとあたりを見回し、ごろごろと転がりまわっている。

呆れ果てて生首の前にしゃがみ込んだ。


「アンタさあ、自分が死んだって分かってる?」


「ぎいぎい」


「この前、ここで首を吊ったんだろ? それで、頭と体が千切れたんだよ」


俺は首のあたりを指さした。

生首はごろんと地面に転がった。

首を傾げたつもりなのだろうか。


「で? これからどうするつもりなんだ?」


「……ぎいぎい?」


生首の目線が泳いだ。何も考えていなかったらしい。


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釣瓶落としの後始末 長月瓦礫 @debrisbottle00

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