白葬

蒼天 隼輝

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 つま先まで白い装束に身を包み、余計な木が少ない雪原を目指す。腕には僕が化粧を施した、白無垢の美しい君。その胸が動くことは二度とない。


 ―――「何もかもまっさらになればいいのに」


 君の言うそれは、しがらみからの解放だったんだろう。そう言う君の透き通る頬に何度触れたかったかわからない。叶わない願いの末に多くの者を巻き込んで死んだ君の気持ちも、きっと僕にはちゃんとわかっていない。


 せめて最後は美しくあってほしい。君の願い通り、真っ白で、まっさらであってほしい。吹雪の中硬い彼女の手を握り、僕は雪原に倒れこみ目を閉じた。




 せっかくの、唯一僕が叶えられる彼女の願いだ。

 どうか掘り返すなんて野暮なことはしてくれるな。

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白葬 蒼天 隼輝 @S_Souten

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