個性的な妖たちに振り回されながら、奏太は己の意志を貫く

旧家の分家に生まれた奏太は、その自覚なく「普通の」生活を送っていた。
しかしある日、本家に呼ばれ「妖界と現界の境界に結界を張る役割」を担うよう一方的に言い渡される。
以前「役目」について説明を受けたことはあるが、よく話を聞いていなかった奏太にとっては寝耳に水。しかしお付きの妖、汐と亘の強引な誘導もあり、否応なしに結界を閉じる役目を担うことになる。
妖界と現界の狭間に近づく役割故、奏太は次第に妖界の事情に巻き込まれていく……

個人的には「現実世界のすぐ傍に、人間世界と全く違う論理で動いている異世界が併存している」という世界観が好きなので、妖界という異世界が併存する本作の世界観には強く惹かれます。妖のビジュアルがイメージしやすく、また個性的な面々がそろっているので会話劇も楽しいです。彼らが本当に存在していたら世界はもっと彩り豊かに見えるのだろうなと感じました。

また、奏太のまっとうな倫理観と正義感は見ていてほっとします。善悪を即座に判断し行動する彼の生きざまに共感できたので、するすると読み進めることができました。その真っすぐな性格故に色々な人や妖に振り回されますが、それもまた彼の魅力です。「陽の気」という異能を使える存在でありながらも、少しも偉ぶらない、等身大の学生である点に好感が持てます。

「千と千尋の神隠し」や「猫の恩返し」などの世界観が好きな方はハマると思います。
(※本レビューは、人界編第89話 初夏の雪⑤ : side.柊士ー までを読んだ時点での内容となります)

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