第103話

 そのあと、横山さん兄妹は先に帰っていった。


 なので、二人が起きるまで待つことにする。


「うーん! 今日は疲れたなぁ〜」


「確かに……明日が怖いな」


 主に筋肉痛的な意味合いで。

 こちとら、基本的にはインドアだし。


「私だってそうだし。結構、肩こりとか筋肉痛とかあるしねー」


「……まあ、そうだろうな」


 なにせ、ご立派なモノを持ってらっしゃるし。

 ……いかん、水着姿を思い出してしまう。


「ちょっと? どこ見てるし……」


「み、見てない!」


「ふーん……まあ、別に良いけど。野崎君、改めて今日はありがとね」


「えっ? あ、ああ、別に俺のためでもあるから」


 むしろ、こちらが礼を言いたいくらいだ。

 水着姿云々ではなく、純粋に楽しかったから。

 こんな俺が、可愛い女の子と遊園地やプールに行けるなんて思ってなかったし。


「うん、それはわかってるけどね。ただ、中々小さい弟や妹を遊びに連れて行ける機会がなかったから。こういう時に、お父さんとかいてくれたらなぁって……あっ! ごめん、忘れて」


「……その、俺なんかが言って良いのかわからないけど……何かあれば、話くらいは聞くから」


 なんとなくだが、葉月の家の事情は察せれる。

 家には仏壇や写真がなかったから、おそらく父親は生きている。

 うちには父親がいないからという台詞からもわかる。

 多分……そういうことなのだろう。


「野崎君……うん、ありがとう。じゃあ、そのうち聞いてもらおうっと」


「お、おう、任せとけ」


「ふふ……そういえば、小説の参考にはなりそう? その、今日のイベントとか……水着姿とか」


「そりゃ、もちろん。これで、色々と捗ると思う」


 今日俺が感じたドキドキとか、楽しいって気持ちを文章に乗っけるだけだ。

 ただ、恥ずかしくなって頓死しそうになりそうだけど。


「なら良かったし。あとは、次は何をするんだっけ?」


「次は夏コミかな。確か、今年は八月八日からだから」


「あと二週間くらいね。じゃあ、それまでに宿題とか終わらせなきゃ」


「あぁー……めんどうだ」


 すっかり、忘れていた。

 そして、毎年ギリギリになるパターンだ。


「じゃあ、一緒にやる? それもイベントとかになったりする?」


「確かに……では、お願いします」


「仕方ないなぁ〜」


 ……そっか、これで勉強を口実に会えるのか。

 そう思うと、宿題も悪くないな。


「あっ、起きるかな?」


 その言葉通りに、二人が身じろぎをして……。


「あれ? プールは?」


「ふぇ? ここは?」


「何を寝ぼけているのよ。あんた達は疲れて寝ちゃったの。さあ、帰るわよ」


「ええ〜!? まだ遊びたいし!」


「わたしも! アトラクション乗りたい!」


 その言葉に、二人で顔を見合わせて……笑い合う。


「仕方ないわね。野崎くん、もう少しだけ付き合ってくれる?」


「ああ、もちろん」


 結局、俺達は暗くなるギリギリまで遊園地で遊ぶのだった。




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web作家で陰キャの俺、小説を書いてるのが陽キャのギャルにバレました~そしたら何故がラブコメみたいな展開になった件~ おとら @MINOKUN

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