第102話
その後、着替えを済ませて表に出ると……。
ベンチに、先ほどお兄さんがいた。
その両隣には拓也と恵梨香がいて……すやすやと眠っていた。
「おっ、来たか。そういや、名乗ってなかったな。桜の兄で、横山洋平だ」
「こ、こんにちは! 野崎と申します! さ、先程はすみませんでした!」
まずは改めて、きちんと謝らないと。
よくよく考えてみたら、めちゃくちゃ失礼なことをしてるし。
「いやいや、気にすんなよ。むしろ、関心したくらいだ。好きな女の子を守ろうとしたわけだし」
「い、いや、そういうアレじゃなくてですね……」
「まあまあ、良いじゃん。あの子意外と真面目だから、君みたいな人が合うと思うし」
最後の一言に、一瞬思考が停止する。
……似合うって言った?
しかも、嘘を言ってる雰囲気ではなさそう。
「……そうですか?」
「ああ、そう思うぞ」
「その、どの辺がですか? どう見ても、あなたみたいな人のが似合いそうですけど……」
「見た目的にはそうかもしれないけどな。でも、あいつギャップあるだろ?」
それは知ってる。
もう、嫌ってほどに。
俺は、そこに惹かれてるわけだし。
ただ……この人に言われると悔しいって気持ちが出てくる。
「……はい。家族思いだし、優しいし」
「そうそう。君といて楽しそうだし、似合ってると思うけどな。それに、そんなにホイホイと男と遊ぶような子じゃ……おっと、やめとくか」
横山さんの視線の方に振り向くと、入り口から葉月が出てくるところだった。
すると、横山さんが俺の肩に手を置き……。
「お節介かもしれないが、あんな良い子はそういないぜ? 他の男が現れる前に、ささっと動いた方がいいかもな」
「な、な、なっ……わ、わかってます」
「よし、なら良い。俺にとっても、妹みたいなもんだし」
すると、葉月が駆けてくる。
「ごめんねー、遅くなっちゃって」
「いや、平気だよ。このお兄さんと話してたし」
「洋平さん、色々とすみませんでした」
「いやいや、気にしないで。んで、これからどうする?」
「二人共寝ちゃったかぁ……もうすぐ四時だし、二人が起きたら帰ろうと思います」
「んじゃ、俺らも帰るか。久々に妹と遊べたしな」
「お兄ちゃん、ラッキーだったね。こんな可愛い妹と遊べて」
「ふふ、ほんとだし」
「へいへい、そうだな。どっちかというと、結衣ちゃんの水着姿を見れたからラッキーだな」
「もう! 言わないでくださいよー!」
「お兄ちゃんのすけべ!」
「ははっ! すまんすまん!」
ぽんぽんと会話が進み、俺の入る隙がない。
本当に、俺が似合っているのだろうか?
すると、お兄さんが肩を組んでくる。
「なっ、野崎君」
「へっ? な、何がですか?」
「いやいや、聞いてたでしょ? 結衣ちゃんの水着姿の話……どうだったよ?」
……鈍い俺でも、これはわかる。
この人なりのエールだってことは。
「か、可愛かったです」
「っ〜!! あ、ありがとぅ……ま、また来ても良いから」
「お、おう」
えっと、見るからに恥ずかしそうにしているから……。
ひとまず、正解ってことで良さそうだ。
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