悪魔は語る
梅福三鶯
第1話 祠の悪魔
俺は歩き続けていた。
(こっちに来い……)
声に導かれるままにふらふらと、ひたすらに。
ここまで辿った山道は夢の中で見た通りの景色だったから、必ずこの先にあると確信していた。
『絶対に探してはいけない。いいな』
じいちゃんの言葉が過る。
じいちゃん、ゴメン……でも俺はアイツを許せないんだ……。
「本当にあった」
雲行きの怪しい天気の中、山道を登り詰め辿り着いた小さな社。
目の前に広がる光景に、やはりアレはここにいるのだ、と心臓が緊張感を伝えていた。
(其処の木に触れてこい)
小さな社の鳥居をくぐり抜け、指示された木の前に立つ。
『いいか、涼真。神社の境内にある御神木には触れてはならんぞ』
神社を正常に保つ為の大切な物だから。
拝み屋だったじいちゃんは家の神棚に毎日拝んで神様を敬っていたから、神社でのタブーはよく教えてもらっていた。
注連縄のされている御神木に一瞬、躊躇した。
だが、アイツの顔が頭に浮かび抑えられない怒りのままに手を触れた。
(クククッ)
アレの笑い声が頭に響く。
(さあ御対面だ。その扉を開けろ)
囁く声の意のままに、小さな社にある祠に手をかけ開けた。
『よう小僧』
祠を開けて目に入ったその姿は、異様だった。
祠の中にいた小さな悪魔は、山羊の角を頭に頂き、長い黒髪、青の瞳に、豊満な胸と細身の身体には、その身体に沿うような衣服とアクセサリーが身に付けられている。
左腕に蛇を巻き付け、ニヤニヤと笑ってこちらを見る。
異様だったのは、四つん這いの姿勢で、口から伸びる長い舌と両手足が、釘で刺されているからだった。
『この姿にびっくりしたか、小僧?』
頭の中に声が響く。
『オレは今、あるやつに封印されちまって、こんな姿だ。手も足も舌も動かせねー。だから安心しろ、オレからは何にも出来ねーよ』
悪魔は涼真の頭の中に語りかける。舌が封印されているため、テレパシーで伝えているようだ。
『で? どんな願いをオレに叶えて欲しい? そのために来たんだろ?』
尋ねる悪魔に涼真が言う。
「その前に……対価として俺はお前に何を差し出せばいいんだ?」
悪魔は必ず、望みと引き換えに何かを奪う。それは、金銭だったり、身体の一部、または魂だったりする。
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