第3話 そして願いは叶う
涼真は全てを話し終えると、また怒りが湧いたようで、鼻息を荒くしていた。
『なるほど、なるほど。そりゃ嫉妬するわなー』
悪魔は舌が釘で固定された状態で、じゅるるっと唾を飲み込み、瞳はらんらんと輝いていた。
『いいだろう、その願い叶えてやるよ。ホラ』
悪魔はゆっくりと、まばたきをした。
『よし、願いは叶えた。オレはオマエの魄をもらおう』
話を進めようとする悪魔に、涼真は言う。
「いや待て。確証を得てからだ。じゃないと、取引は出来ない」
『もう叶えたって』
言い張る悪魔に、涼真は譲らなかった。
そこへ涼真のスマホにメールがくる。見ると、勇助からだった。
「勇助……『急に右手が動かなくなった。病院へ行って来る』まさか、本当に?」
『だから言っただろ? もう叶えたって』
涼真は悪魔に魄を1つ渡し、急いで勇助の元へと駆けつけた。
そして病院へ着くと、待合室に勇助はいた。
「勇助。右手、大丈夫なのか?」
尋ねる涼真に、困った笑みを浮かべて、勇助は答える。
「そんなに息を切らして駆けつけてくれたんだ。ありがとう」
そう礼を述べてから勇助は言った。
「今医者に注射を打ってもらったとこ。……医者が言うには、手の酷使し過ぎで腱鞘炎の一種だと思うって。けど、はっきりとした原因はわからないってさ」
あははっと、勇助の乾いた笑いが病院内に響く。
「やっと連載が取れたのになぁ……困っちゃうよ」
落ち込む勇助に、涼真は言う。
「大丈夫だって。必ず治るさ」
「ありがとう」
力のない笑みを浮かべる勇助に、涼真は思う。
(俺の願いは叶った、叶ったんだ!!)
────
────────
こうして涼真は、やっとスランプを抜け出せた。
涼真は思う。
スランプだったのも、アイツがどんどん俺を追い抜いていくさまを見せつけられて、その焦りから身動き取れなくなっていただけなのかもしれない、と。
時間はかかったが、最終候補に残るようになり、賞を取るようになり、涼真はとうとう勇助と同じプロデビューが決まった。
すぐに勇助は、涼真の元に駆けつけてお祝いを言ってくれる。
「やったな、涼真。プロデビューおめでとう」
勇助の祝いの言葉に、涼真は笑顔だ。
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