第3話 異世界であんこが食べたくなってしまった女子の話。

 

 

 失礼。大変取り乱しました。眼前には鬱蒼と茂るジャングルの中、ポッカリと開いた巨大な空間があって、そこかしこに世界最大のウシ(地球基準)ぐらいにデカい毒々しい色をしたカエルが一万匹ぐらいはおります。……繰り返す。その数、だ。どんだけ繁殖してんねん。


 そしてその向こう、開けた巨大空間の中央にはこれまた巨大な葉っぱと、縦に細長いサヤを大量にぶら下げた植物が。アイツこそ、我々が長きに渡って探し求めていたアズキみたいなやつなんである。


 自分の知ってるアズキってのは、こんな熱帯雨林みたいにクソ暑くてジメッてる環境下で育ったりはしない。最適なのはもう少し気温の低い温かめな地域なのだ。


 ここは異世界。こっちの常識に囚われ過ぎて捜索範囲から外してたわ~……。


 そんでもって、更に追い打ちなのがこの生育環境の特殊さよ。人目にほとんど触れないであろうジャングルの中、バカデカ毒ガエルの群れを突破しないとたどり着けないんじゃ、そら誰にも知られてないっちゅーの。


 後で検証した結果、このクソデカ・アズキもどきは長年に渡る周囲の毒ガエルが蓄積させた毒成分を克服し、過酷な条件を生き抜くために独自の進化を果たした。その最大の特徴が――



 \\\ ンゲェーッ! ンゲェーッ! ンゲェーッ! ///

 \\\ ズダダダダッ! ズダダダダッ! ズダダダダッ! ///

 \\\ ンゲェーッ! ズダダダダッ! ンゲェーッ! ズダダダダッ! ///

 \\\ ンゲェーッ! ズダダダダッ! ンゲェーッ! ズダダダダッ! ///

 \\\ ンゲェーッ! ズダダダダッ! ンゲェーッ! ズダダダダッ! ///



 ……これだよ。実はクソデカ・アズキもどきのサヤには二種類あって、巨大な本体の元になっているしゅを残すためのタネ(大)が入っているサヤ(大)と、そのタネ(大)や葉なんかを喰おうとする毒ガエルどもを迎撃するために用意された大量の弾薬…もとい、タネ(小)の入ったサヤ(中)がある。


 このサヤ(中)をこじ開けると、手のひら大のとんがったアズキ色のタネ(小)がビッチリと何重にも詰まってて、電磁砲レールガンの要領でタネ(小)を叩きつけて毒ガエルを粉砕しているのだ。


 そんな動画だったら間違いなくモザイクまみれなスプラッタ毒ガエルもクソデカ・アズキもどきの栄養になっており、ますます巨大化する原因になっちゃったんじゃないかと勝手に確信しております(キリッ)。


 おまけにこのバカデカ毒ガエル、オツムはあんまりなのか迎撃されて砕け散った同胞さんをそろ~っと近づいて長い舌を伸ばし、アズキもどきの迎撃反応範囲外から絡め取って平然と喰ってやがるんである。ある意味完全なるエコだね!(ヤケクソ)


 独特の気が滅入る匂いにテンションだだ下がりつつ、残った理性でクソデカ・アズキもどきのタネ採取をどうするか考えた結果、とってもシンプルな結論に落ち着きました。


 とにかく邪魔なバカデカ毒ガエルをある程度狩って数を減らし、クソデカ・アズキもどきにちょっかい出させないようにして、最終的に何体かいるアズキもどきの一体をブッ倒して回収する。……もうウネウネ動いてるし、ホニャララ呼びで。


 毒ガエル狩りはそこまで苦労することもなく、その肉やら毒やらもある程度アズキもどきの生育に必要かと思って数減らししたやつのみ回収。方法は極低温による瞬間凍結で生きたまんまダイレクトに冷凍しときました。めっちゃ新鮮。


 クソデカ・アズキもどきはでっかい鎌みたいな刃の部分を魔法で作って、遠隔操作で根元からスパッとカット。地面にケーヤンの収納口だけ移動させて、一体まるごと格納して作戦完了であります。所詮は植物だ、ざっとこんなモンよ。



 こうやって探し出す苦労はあったものの、無事アズキをゲット。タネ(大)だとデカ過ぎるんでタネ(小)を使い、簡単な手順であんこにしていきます。ちなみに豆の成分を分析した結果、アズキ自体に毒は含まれてませんでした。


 超ざっくり言うと、アズキを2、3分カラ煎りする→鍋に入れてアズキの2倍の水を加え→弱火でフタをして混ぜながら水分が無くなるまで煮る→これを元に色々できるけどあんこの場合は→同量より少し多めの水を入れフタをして弱火で柔らかくなるまで煮る→鍋を移し替えてメチャ・アマヤ(砂糖)を半分入れる→強火でメチャ・アマヤが溶けるまで混ぜる→沸騰したら残りのメチャ・アマヤを入れて弱火で5分煮る→塩をひとつまみして混ぜたら完成。


 ……ついにでけた。いや~長かった。探し始めてから1年半ぐらい?


 そのまんま木べらで直食いしたいトコロだけど、しっかり粗熱を取ってからにする。まぁしばらく放っておくだけね。


 ファースト・バイトはそのまんま。後はパンに塗る、あんバターでトースト、生クリームをホイップして(魔法で殺菌済)、カスタードもいいな……。


『おほー!! うんめっ、うんめーんじゃいやー!!』


 をいをい、ケーヤン何だねその言い回しは。マジで何訛りなん?


 今ある材料ストックで思いつくかぎりのバリエーションを楽しむ。固形で散々楽しんだら、シメはやっぱり……


 って、あああああああぁああああああ!!!


『うひゃあ!? ど、どしたんけあるじっ? こりゃあオラんだぞっ?!』


 あ~違う違う。それは全部ケーヤンのだから。そうじゃなくて……。


 スコーンと忘れてたー。シメでおしるこって来たら、中に入れんのは焼いてカリッとモチっとしてるお餅じゃんか……。


 今回はどうしようもないから諦める。諦めるが……っ!



 コメとモチゴメを必ず見っけて、今度は和食とモチ三昧じゃーーい!





 ※この後、モチモチの実というモチの代用品をすぐに見つけるも、コメ自体の発見にはまた暫くの年月を要するのだが……それはまた別の、お話かも知れない。

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

アズキ探訪記。~異世界であんこが食べたくなってしまった女子の話~ 新佐名ハローズ @Niisana_Hellos

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ