スマートな生活
夏伐
アナログが一番!
『あなたに特別なオファーがあります!』
メールボックスをチェックしていると、そんなタイトルの怪しいメールを受信していた。
迷惑メールだったら、ブロックしておかないと……。
しかし差出人は、大手の家電量販店からだった。
「そういえばポイント貯めてたな……」
メールをクリックすると、どうやら人工知能搭載の家電の無料モニターを募集しているらしい。
前に使っていたものの無料引き取り、月に一度届くアンケートメールに一年間答えるだけで20万もする冷蔵庫が無料でもらえるらしい。
途中で冷蔵庫を返品する場合でもお金は請求されずに回収してくれるそうだ。
「運試ししてみるか!」
どうせ無料だしな!
俺はモニターに応募するために、リンク先に個人情報を入力していった。
数か月して当選メールが届いた時は本当に驚いた。
人工知能は名前を『ひやちゃん』というらしい。βモデルに搭載されている仮の名前。売り出される時はまた別の名前になるそうだ。
スマートスピーカーとしても使えるそうで、これはかなり得したな!
そして俺がやけに条件がいいモニター商品だったことを知ったのはひやちゃんが届いた翌日だった。
冷蔵庫の扉には液晶画面がついており、ほとんどはマスコットキャラであるひやちゃんが映っている。
そして扉を開けようとすると、15秒ほどの動画が流れるのだ。
「だからWi-Fi設定が必須だったのか……」
今すぐ飲み物を飲みたいのにたったそれだけとはいえ時間をとられることが腹立たしい。
しかしそれ以外はスマートスピーカーひやちゃんは便利だし、少しだけ我慢すれば良いだけ……。
と思っていたのは半年までだった。
アンケートにはぼろくそに答えていたが、ついに我慢できなくなりお問い合わせの所にある電話番号に電話した。もう我慢ならねぇ!
「あの冷蔵庫回収してください! ひやちゃんです!」
『はい、どんなご用でしょうか?』
「お前じゃねぇ!!!」
俺はひやちゃんにキレつつ、安易な無料に飛びついた自分を反省した。
結局、最新家電を無料で引き取ってもらい、中古で小さな冷蔵庫を買った。
一人暮らし、静かな生活はとても優雅で心地よい。家電が話さない元の生活に戻っただけだが、久々に心が休まった気分だ。
スマートな生活 夏伐 @brs83875an
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます