概要
機械仕掛けの悪魔は、笑った。
小説家の倉木泰嵩は,少年に一作の推理小説を贈る。それは倉木が実際に経験した恐ろしい事件を小説化したものだった。――厳かに葬送されたひとりの女子高校生。葬儀に出席した彼女の友人たちは,夜の寂れた公園で彼女の死に関するひとつの推理を聞かされる。彼らが仲間を奪われた「緑鴉荘」での殺人事件について,倉木はその犯人が判ったという。思い出されるのは,大鴉が佇むが如く黒く羽を広げる建築。そして管理者の手を離れ退廃し始めた万緑と緑陰。その日は,「夏」にもかかわらず雪が降っていた。まるで太陽が息を止めたように,雪の中で彼女――本堂閑華は殺されていた。“チェーホフの銃”を過適用した異質の犯人当てミステリ。