荒川をあなたと歩く

作者 烏目浩輔

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★★★ Excellent!!!

自分の親との接し方を反省したくなるような素敵な作品でした。

去年、認知症が悪化して施設に入っていた父がガンで亡くなり、今は認知症の母と一緒に暮らしています。

頭では「認知症が原因」だと分かっていても、繰り返し問題行動を起こされると感情が先走り、ついつい厳しく当たってしまいます。もう幾ら注意したってダメなのに……。その度に自己嫌悪に陥ります。

この作品を読んで、父と母が元気だった頃、犬の散歩に川に出掛け、川べりを三人で歩いたことを思い出しました。

できるのなら、こんな風に穏やかな散歩をしたいです。
少しは気持ちが和らぎました。

作品の優しさ温かさに触れて心の棘が少しは取れたような気がします。
またしんどくなったら読ませて頂きます。




★★★ Excellent!!!

「ついていく富子との荒川散歩は、いつしかつれていく散歩になった」

この一節に込められた悲しさと虚しさ。
それをあるがままには受け止められない微熱が漂う、行間に潜んだ祖母への想い。

微かな希望は、僅かに溢れ落ちる祖母のささやかな笑みの中にしか見いだせないのに、それを見逃さずに掬い上げる主人公、真由の暖かな慈愛。

隅田川と江戸川の華やかさに掠れがちな荒川を背景に、穏やかに綴られる、家族という見返りのない愛情を描いた、静かに胸に染みる物語。

★★★ Excellent!!!

 認知症の祖母と散歩をする主人公。おばあちゃん子だった主人公も、今では大人だ。しかし少しでも恩返しになるならと、こうして散歩に祖母を連れ出していた。
 祖母は病気をしてから、表情がなくなり、感情を読み取ることも難しくなった。それでも、少しの表情の変化があった時には、主人公は喜びを感じていた。
 散歩のコースには川が流れ、その川は海へと注いでいる。つまり、山と海をつなぐ流れこそ、この川なのだ。知識として知っていても、実感はわかない。
 けれど——。

 日常系の作品ながら、心温まる物語です。

 是非、御一読下さい。