ほほほほ。
@tonari0407
見られているのです……私、こわいわ。
最近、
視線を感じて振り向くと、その人はじーっと私のことを見ています。こわいので避けているのに、近所に住んでいるのか三日に一回は会ってしまうのです。
見られているだけでも背中がゾクゾクします。これが見るハラスメント。見るハラってやつでしょうか? 違うかしら?
ジロジロ見るだけでなく、あの人はたまに声をかけてきます。
「何してるの~? 」
「ねぇ、寒くない? 」
「わぁ! また会えたね」
「こっちおいでよ~ 」
行くわけないでしょう! 不審者さん!
いつも上品なお嬢さんと評判の私は、静かに視線を移動させてやつのことを無視いたします。いないものと同じように扱うのです。
普通の方なら悲しまれると思うのですが、この女性は鼻をフガフガさせて嬉しそうにしていましたわ。あら嫌だ。フガフガだなんて……。でも他に言いようがありませんの。
変態ですわ。
こんなやつをほっておくなんて、この街の警察の方々はお仕事をしてらっしゃらないのかしら? 職務怠慢ですわね。
*
ある日、変態女に仲間が増えました。恋人なのか仲が良さそうですわね。
なんてことでしょう! あんな下品な女に
品の欠片もないあの方は、一体どんな反則技を使ったのでしょう? 全く生意気ですわ!
私は、相手を刺しそうな鋭い眼光で女を睨みつけてやりました。比喩表現ですのよ。実際には刺しませんの。
恋愛運、よこせよこせよこせよこせ……。
アレを、くれくれくれくれくれ……。
あら嫌だ。アレを所望するなんて。
だって、理性が吹き飛ぶ位に美味しいんですもの。
「あー! こっち向いてくれた。今日も可愛い~。ねぇ、見て」
私の目線の意味を理解しないブスは目を輝かせていました。頭も悪いのですね。ある意味かわいそうです。
殿方は……あらっ、この方も私の方を見ていらっしゃるわ。ねぇ、下品に大きな口を開けて笑うこいつよりも私の方が美しいでしょう?
「まぁ、動物だな」
ど う ぶ つ?
私の頭にハテナマークが浮かびます。私を形容するのに、相応しくない単語ですよ。そりゃ動く物ではありますけれども。
そして、称賛してはいなそうな雰囲気ですね。目が悪いのかしら?
「え~、おめめ金色で、毛が艶やかで、仕草に品のある優雅な子だよ? 」
変人女は私の魅力を伝えようとしているわ。
いいですね! 頑張りなさい!
私は褒め言葉以外は受けつけません。
今までも、これからもそうですの!
無神経な見る目のない男性と目が合いました。
かわいいかわいいかわいいかわいい……。
これでもかと、念を送っておきますわ。
きれいきれいきれいきれいきれい……。
「猫だな」
ね……こ?
私の頭の中は真っ白になりました。無敗だった私は負けたようです。なんてこと……。そんなの許されない!!!
「え~、かわいいにゃんこでしょ~? 」
無礼な人間二人は、呆然と立ち尽くす私の前から去っていきました。
しばらく、好物の○ュールも喉を通らないような日々が続きましたの。本当に辛かったですわ。
でも、次第に私の中からフツフツと怒りが沸き上がってきましたの。
あの人間、許すまじ! おとしてやる!
その日から私は、やつらを見かける度に暴言を投げながら誘惑しているのです。お上品な私はやつの前だけ封印です!
あるときは目の前に飛び出して、華麗なウォーキングしながら
「
ときには足元にすり寄って色じかけしつつ
「
でもなかなか効果が出ませんの。女は狂喜乱舞していてキモかったですが、問題は男です。黒縁眼鏡の毒舌野郎は手強いです。
やはりここはあれですのね。最後の手段です。私にしかできないアレ。
ピンクのあそこを殿方に……ああ、恥ずかしくてとても口に出せないわ。
家族以外にはしたことないのよ? 見せたことないのよ。
特別な初めてをあ・げ・る。
はっ、私もしかしてあいつのこと……?
ずっと真剣に考えていたからかしら?
ドキドキドキドキ……
ちょっと、だけですのよ? 変な気持ちになってしまいますから。
ぽふっ (お手)
「
すると、ついに男は――
「可愛いなぁ」と小さく呟いたのです。
ほらみなさいっ!
可愛い私は正義であり勝者です!
これで貴方も私のトリコですね。
さぁ、あの女と別れてきなさい! そして私にアレをプレゼントしてくださいな。
にゃ~はっはっはっ!
(もふもふしっぽ、ブンブンブーンッ! )
あっ、いえ……ほほほほ。ごきげんよう。
(シュタタタと淑やかに退場)
ほほほほ。 @tonari0407
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