戦争は人の、意志も心情も希望も感情も、蔑ろにする。送るべきだったささやかな日常も、そこに寄り添うべき想う人も、何もかも。仮にその混沌の中で、一縷の望みを得られたのなら、その人は、得られなかった大多数の人たちの代わりに、果たさなければならない使命がある。それが、生きて、残る、ということ。「私」に課せられた最後の命令。その真意。それは小隊の仲間の家族に顛末を伝えることでも、写真を手渡すことでもない。生きて、残る、ということ。この「残る」ことの意義を、観照されられる作品。
第二次世界大戦で戦死した祖父の思いを想像しながら、拝読させていただきました。生きて、残る人生を歩む努力を続けた主人公の生き方から平和への思いがひしひしと伝わってきて、心打たれました。
作者鈴ノ木 鈴ノ子さまのつむがれるお話は、いつも深い感動と清々しさを感じずにはいられない。そして生きるという当たり前の行為が、どれほど貴重で尊いことか、私たちの心に訴えかけてくれる。