第53話 弟さん
「あ、あの……助けて頂いてありがとうございました」
ハンター達から離れて安全を確保すると、そうお礼を言うその子。
無邪気そうなその笑みは、将来だけでなく、現在でもかなりの人の心を掴みそうな、そんな魅力のありそうな様子だけど、やはり俺には既視感が強かった。
凄く身近な大切な人に似てる気がする。
まあ、俺にとって大切な人は少ないのだけど……。
「気にしないで。君も大変だね」
「何だか出歩くと声をかけられることが多くて……ダメですね、こんな事じゃ」
そう言って苦笑するその横顔……それを見て、俺はようやくこの子の正体に当たりがつけられる。
もしかしてこの子……
「いや、仕方ないよ。彼女達にとって君が凄く魅力的でちょっかいをかけたかったんだろうね。でも、ああいうのはきちんと断った方がお互いのためだよ」
「そうですよね……」
「とはいえ、いきなりは難しいだろうし、もし困ったら誰かに助けてもらえばいいよ。俺も近くにいれば手を貸すからさ」
そう言うと驚いたような表情を浮かべたその子は、更に瞳を輝かせて俺を見る。
その様子が子犬のようで、可愛らしいとは思ったのだが、やはり姉弟というのは似るのだろうかとも思った。
いや……俺と妹はあんまし似てないし、家庭によるかな。
「お使い大変だろうけど、頑張ってね。じゃあ、また」
「あ……あ、あの!」
落ち着いた頃に、そろそろ大丈夫だろうとそのまま立ち去ろうとするとその子に引き止めるようにクイッと服の袖を引っ張られる。
「どうかしたの?」
「えっと……お名前を聞いてもいいでしょうか?僕は
やっぱり、水瀬さんの弟さんか。
確かに顔立ちも似てるし、雰囲気もそっくりだ。
「蒼井春斗だよ。楓くん……て、呼んでもいいかな?」
「は、はい!勿論です!」
「ありがとう。俺の事は好きに呼んでくれていいから」
「えっと……じゃあ、お兄さんと呼んでもいいですか?」
「いいよ」
そう言うと嬉しそうに微笑む楓くん。
その笑みは水瀬さんにそっくりで、この子に不思議な親近感を抱くけど……馴れ馴れしくするのも悪いし、ここは親切なお兄さんとして距離を縮めて水瀬さんとの外堀を埋めるべきだろう。
それに……それでけでなく、俺自身この子の事をどこか放っておけないと思った。
血族由来のものなのか、この姉弟の性格的なものなのかは定かではないけど、俺はどうやら水瀬さん一家には弱いらしい。
ゆっくりと仲良くなろうと思ったのだが、まあそれは本当にそのうちでもいいのでまずは俺のプラスのイメージを強めておかねば。
第一印象というのは大切らしいしね。
クソ真面目な堅物委員長をデレさせたい yui/サウスのサウス @yui84
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