第52話 不思議な再会
「ねぇねぇ、そこの君。お姉さん達とこれから少し遊ばない?」
水瀬さんとの楽しい帰宅を満喫してから、一度家に帰ってから、明日のお昼の買い出しでもしようかと軽く支度をしてのんびりと夕方の道を歩いていると、見た感じかなりチャラそうな女子中学生数人がたむろしてるのを見かける。
逆ナンだろうか?最近の子はマセてるなぁ、と思いつつも軽く見ると、どうにも相手にしてるのは小学生くらいの可愛い男の子であった。
「あ、あの……ぼく、お使いが……」
しかも見覚えのある少年であった。
いつぞやの、水瀬さんとのカラオケの前の日に帰り道で出くわした不良にカツアゲされそうになっていた男の子。
「サボっちゃいなよ。お姉さん達がいい事……教えてあげるから」
「梨沙ってば本当に子供好きだよねー」
「なにさ、恵梨香も美穂もそうでしょ?」
「「まあねー。きゃはは!」」
……なるほど、年上の男との遊びに飽きた年下好きの少女たちの狩りか。
そんな事を思いつつも、その彼女達に囲まれている存在に視線を向けると、そこには哀れな子羊が……彼女達から漂ってくる下心満載な獣の視線に怯えて、涙目でいる少年の様子が目に入り、思わず俺は声をかけていた。
「いたいた。探してたんだよ」
さも知り合いのように、自然な笑みを浮かべて割り込むと、その子は俺の事を覚えていたのか、俺の介入に目を輝かせていた。
だが、そんな彼とは違い、予定外の邪魔の入った狩人達の機嫌はなかなかに悪くなる。
「お兄さんなあに?この子の知り合い?」
「弟だよ。可愛いでしょ?」
「へー、お兄さんブラコンてやつ?」
「でも、少しカッコイイかも……」
「顔は良いけど、ブラコンはないわー」
大丈夫だよ、俺も君たちのようなタイプはNGだから。
そんな相思相愛を抱きつつも、俺はその少年の手を握ると堂々とその場を去っていく。
止めるかと思ったが、背丈も大きく、年上の俺の威圧感はかなりのものだったのか、諦めたように次の獲物を探しに行くハンター達。
そのガッツだけはある意味賞賛にも値するけど、とりあえず何も知らない無垢な少年を汚す性癖はどうにかしないとガチでポリスメンにお世話になると思う。
まあ、俺には彼女達の今後がどうなろうと知ったことではないけど……そうして無垢な子供が汚されるような世の中にはきちんとNOと言わないとね。
水瀬さんのようにまっすぐで綺麗な心はなくても、彼女と釣り合えるように努力は怠るべきではないと、俺はそう考えるが、何にしても、水瀬さんのためにも多少は人様に見せられる、カッコ良い生き方を目指すのも悪くないだろう。
そんな不純で純粋な人助けだったが、これがますます水瀬さんとの繋がりの強化になるとはこの時の俺は考えてなかったのだが……まあ、それはそれかな。
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