大学で民俗学を教える“僕”は、ひとりの学生から不思議な葬儀の風習の話を訊き、その村へと調査におもむく。その村で死者をいかに弔うのか……?よそ者を拒むかのようなその村では、そんな、あるかもしれない、ないかもしれない、不可思議な葬送儀礼がのこり、住人たちも平然と口にする。私たちとは全く異なる儀礼、風習の存在は、すぐ隣に異界が存在すること、そして簡単に越境できることを如実にあらわす。風習の内容よりも、その距離感、越境の容易さに私は戦慄する。さらにダメ押しのラストが秀逸。静かにぞっとさせられる一編だ。
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