人間と吸血鬼、彼等の戦いのその先は――。

現代日本を舞台とした、人間と吸血鬼の戦いを描いたダークファンタジーである御作品。
吸血鬼達の圧倒的な強さに抗う人間達の姿は、泥臭さもあり血腥さもあって、そしてそれ以上に強い信念を感じます。

主人公の九竜朱仁をはじめとしてそれぞれの登場人物達の背景、心理描写が細やかで、読み進めていけばいく程に深い没入感があります。
登場人物達の人間模様にも厚みがあり、関係性の深まりを丁寧に描き出されていく作者様の技巧が本当に卓越しています。
だからこそ、登場人物達の関係性に大きな変化が生じるような展開がやって来た時の衝撃も大きく、彼等が抱く葛藤、喜怒哀楽に、読み手である私達も強く共感する事でしょう。

また人間達だけではなく、吸血鬼達の描写にもご注目頂きたいです。
人間にとっては脅威である吸血鬼達。彼等彼女達はひたすらに強く、気高く、美しく、それ故に絶望的なまでに恐ろしい。
しかしそんな吸血鬼達にも人間と同じように感情があり、苦悩もあり。ただただ彼等を吸血鬼だから悪と判じるには余りにも人間的で、 気付けば吸血鬼達にも感情移入しています。

緊迫感のある戦闘シーンには魅せられ、心理描写には心が揺さぶられ、ページを捲る度に人間側、吸血鬼側にも好きだ、応援したいと思える登場人物が増えていて……もはや満足感しかないこの読後感。
ぜひこの『イノセンス・V~不完全な赫~』の世界観に、あなたも浸ってみませんか?

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