第5話 (R15) 杏の想い

凛の部屋に来るように言われた杏。


部屋につくと、コンコン、とドアをノックした。


「どうぞ」


凛の声は優しいけれども、何を考えているのか良くわからない。


凛は机のそばの椅子に座っていた。

机も椅子も、品のあるものだった。凛によく似合う。


「こっちにおいで」


凛は招き猫のように、杏にこっちに来るように言った。


「??」


杏は首をかしげた。


杏は凛の所へ行くと、凛は杏をそっと抱きしめた。


「凛さん、どうしたんですか?」


凛は抱きしめる手を強めると、そのままベッドへと杏を押し倒した。


「ちょっと凛さん?」


杏が動こうとすると、凛は杏の両手を押さえた。凛は武道を習っていたから、相手を押さえつける事には慣れている。


「ちょっと、ちょっと凛ちゃん!」


凛の真剣な眼差し。

額にキスをし、頬、首筋と下がっていく。


「お願い!どうして!待っ…。」


杏の口は凛の手で塞がれた。

このまま最後までされてしまうのか?




その時、ドアがバーンと開かれる。


凛の母親だ。医師として保健所の所長をやっており、こんな早くに帰ってくるのは珍しい。


「杏さんを病院に連れて行って。自由診療で!」


使用人に命令する。


「あなた、自分が何をしたかわかっているの?」


凛の手は震えていた。


「申し訳ありません」


「謝って済む問題じゃないの。これは立派な犯罪なの。双方の同意が全くないでしょう。早急にお父さんと話し合うけれども、杏さんに口止めしないといけないわね」


凛は父親が戻るまで、暫く自室にこもっていた。

何回もため息をついた。

同意を得たらいいのか?

そもそも、杏から同意なんて得られるのか?




杏は総合病院に車で連れて行かれた。

一通り診察を受けた。


個室へ連れていかれた。


杏は一人になると、涙が出た。

凛ちゃんはどうして杏にあんな事をしたのだろう。あのまま最後までされていたら、凛と杏との関係は、一体どうなるのか。

凛は誰でも良かったのか?


コンコン


ドアがノックされた。


「どうぞ」


凛の父親だ。


「凛にあのような事をさせて申し訳ない。お詫びに、サラリーマンの生涯賃金3億円を振り込ませてもらい、杏のお母さんの借金の返済をした。悪い事ではないと思う」


杏は驚いた。

ただ、背に腹はかえられない。

凛の父親に頷いた。


ただ1つ、凛に確認したいことがあった。


「あの…、凛さんのお父様」


「どうしました?」


「私を凛さんに会わせてください」

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