第3話 身分の差を突きつける


凛は自室のベッドに腰掛け、ため息をつく。

ふと、小学生の時の杏との事を思い出す。


凛は、杏と遊んだ後、帰り際にとても寂しくなった。

だから、手を握るかハグをしてから別れた。

凛は、それは好きとかではなく、子供同士でスキンシップする、良くある事だと思い込んでいた。


杏は凛の気持ちを薄々気付いていた。

凛が別れ際にスキンシップするのは、寂しいだけでなく、杏の事を好きだからだ。だから別れ際が寂しいのだと。



一方。

凛は将来、とある企業の社長が、自分の息子とお見合いをさせたいという事も小耳に挟んだ。


杏への想いが成就する事はありえない。


「前途多難ね。というかあり得ないね」



杏がダイニングを整えている時、凛が話しかけた。

「ねえ、杏。後でお話しない?」


「ごめんなさい。退勤して子供のお迎えにいかなければならないので…。また後日ね」


凛はカッとなった。

こんなにも近くにいるのに、遠くにいる。

自分との距離は明らかに遠い。


「何で…。あんたなんて、代わりはいくらでもいるのよ!」


凛は急に怒った。

杏の子供に嫉妬したのだ。

昔みたいに、独り占めの杏ではないという事を、凛は言葉で理解していても、感情がそれを理解していなかった。


「凛さん、それは困るんです。こちらをクビになったら、私は首を括るようです」


「だったら、生活保護を受けるという事も出来るでしょ!子の加算もあるみたいし、最低限の生活は出来るしね」


「 そんな…。酷い…」


凛は、不敵な笑みを浮かべる。


「だったら、私の靴を舐めてみなさいよ」



驚く杏。

凛は身分の差を突きつける。


杏は初めて涙を静かに流す。


「昔の凛さんは、勝ち気ではありましたが、こういう屈辱的な事はさせなかったです。だから、私は悲しいです」


杏は静かに、自分の気持ちを吐露する


はっと我に返る凛。

杏に当たった自分が恥ずかしい。

杏が自分を余計に嫌いになるかもしれない。

本来なら、凛は急に怒る事は殆どない。


この後で、凛は杏を苦しめるための次の強行手段を考えていた。



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