第2話 再会と激しい嫉妬と
凛の母親は保健所に勤める医師で忙しく、深夜の帰宅が当たり前だった。
父親は弁護士事務所の所長で、交通事故を専門に扱っている。
土日祝日は家族揃って過ごせるが、平日の凛は孤独だった。
凛は一人っ子だったからだ。
凛の父親は、凛を一人にさせるまいと、今までヘルパーを二人雇っていた。一人は炊事係。もう一人は掃除係。
そして三人目。
凛が心を許せる人物にしたいと思った。
凛は18歳の有名私立大学の大学生になっていた。専攻は理工学部。授業は退屈だったが、英会話サークルは楽しかった。
ある日、凛が帰宅すると、平日なのに父親がいた。
「凛、三人目のヘルパーを雇った」
「お父さん、私はもう18歳の大学生よ」
「大学生だからこそ、迷ったり、道を踏み外す事もある。18歳など、まだまだ子供だ」
凛はため息をついた。
「それで、次はどういう役目の人なの?」
「他のスタッフの補助と、凛の話し相手だ」
別室から一人の女性が出てきた。
「えっ!?」
凛の父親の隣にやってきて、頭を下げる女性。
「高橋杏(たかはし あん)さんだ。」
凛は目を丸くした。
驚いたと同時に、威嚇した。
「何の理由があって、私に近づこうとしたのか知らないけれども、小学生の時と違って私は変わった」
凛は続ける。
「ところで、あなたも18歳だと思うけれども、高卒なの?」
「私は17歳で出産したので、厳密には中卒です」
出産!
杏は凛の上を行ったのだと思った。
凛は男性と付き合った事がない。男性の友達さえもいない。
杏に子供が出来るということは、夫婦の営みがあった。つまり、杏を抱く男性がいた。杏は何十回も何百回も抱かれたということだ。
その未だ見ぬ男性を見付けたら、まるで殺してしまってもおかしくないほどの嫉妬の炎が燃えただろう。
「私は、子供を授かり、諸事情で夫と別れました。高校中退では女性の仕事も少なく、託児所もないんです。そんな時、凛さんのお父様から打診がありました。仕事中は子供も見てくださると。ありがたいことこの上ないです」
杏は凛に微笑みかけた。
凛は杏をじっと見つめた。
「諦めないで学校行きなさいよ。高校、大学も夜学で。私が見てあげるわよ」
「こらこら、まだ自己紹介の段階だぞ。この様子だと仲良く出来そうだな」
一見上手くいきそうな二人だったが、凛の過度な嫉妬が、二人の関係をギクシャクさせることとなる。
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